暁 〜小説投稿サイト〜
蒼天に掲げて
六話
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(なんだよ? もしかして俺に爺と旅しろってか?)

『そういうことよ。別にいいでしょ?』

(精神的にいやだ)

『この程度なら大丈夫でしょ、それに私達もそろそろ新しい行動しないといけないんだし、ちょうどいいじゃない』

 照姫にそういわれ、確かに俺もそうだと思ってしまったので頷くしかない。

「仕方ねえな。そのかわり爺、俺にこの世で生き残る術を教えろ。それが条件だ」

 爺は俺の条件を聞き、にこやかな笑顔で快諾した。

「任せておけ、最初からそうするつもりじゃったからのう」

 最初から? と俺が声に出そうとすると、爺が、持っていた二本の太刀を俺に渡してきた。

「お主にやろう」

「え? いいのか爺、これお前の息子の形見だろ?」

「その息子の頼みじゃ、その武器を使いこなせる者を探してほしいと」

「いや俺には絶対使いこなせねえぞ?」

 俺はそういって爺に野太刀を返そうとする。

 だってこれ一本ですごい重いんだぜ? しかも二メートルほどもあるから俺の身長じゃ背負うことすらできないし。

「今はできんがお主が修行をすれば可能じゃろう。なにせその歳でこの森を生き抜くことができるんじゃからな」

 自信に満ち溢れた顔でそういわれ、俺は少しの間迷った。

 確かに魅力的な話だ。こんな業物といってもいい太刀を二本ももらい、しかも爺が修行をつけてくれるらしい。だがしかし、まだ俺には早いんじゃないかとも思う。
 爺と子供が二人で旅をすればこの世の中だ。賊なんかから見れば俺達は格好の獲物だ。爺がどれほど強くたって限度があるだろう、それに爺だ老いもある。そこでお荷物になる俺がいればどれほど大変だろうか。

「大丈夫じゃよ」

 俺の考えていることが分かったのだろうか。爺が自信満々に宣言する。

「儂だって馬鹿ではない、ちゃんと考えておるわい」

 それに、と爺が俺を見てニヤリと笑う。

「お主がすぐに強くなればいいんじゃろうが」

 爺のその顔に、俺は不思議と嫌悪感は感じなかった。そのかわり、煽られた自分の顔にもニヤリと笑みが浮かび、爺に仕返しとばかりにこういった。

「すぐに老いぼれ爺くらい守れるようになってやるよ、このクソジジイ」

 こうして俺はこの森を抜け、ジジイと旅に出るのだった。

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