第三幕その四
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第三幕その四
「私と一緒に」
「ウラジミール!」
公爵は遂に直接我が子の名を叫んだ。
「どうするのだ!」
「私は。どうすれば」
どうしていいかわからなかった。だがその時だった。
「捕虜達が逃げ出しているぞ!」
「追え!」
「くっ、遂にか!」
ポーロヴェッツ人達の声であった。公爵はその声を聞いて歯噛みするしかなかった。
「こうなっては。ウラジミール!」
それでも我が子の名を呼ぶ。
「共に生きていれば」
「生きていれば」
「また会おう。さらばだ!」
「父上!」
ウラジミールもまた父に対して叫んだ。悲痛な声で。
「また神のご加護があれば」
「うむ!」
「共にルーシーを護る為に戦いましょう!」
「待っているぞ!」
公爵もそれに応えた。
「その時をな!」
「はい!」
「では行くぞルーシーの戦士達!」
公爵は同志達に対して言った。
「いざ祖国へ!」
「誇り高き祖国へ!」
「我等の家族を護る為に!」
彼等は去って行く。馬のいななきが遠くへ消えていく。ウラジミールとコンチャコーヴァのところにポーロヴェッツ人達が集まる。彼等はウラジミールを剣呑な目で見ていた。
「貴殿は逃げなかったのか」
「しかも王女様と一緒にいるな」
不審なものを見る目そのものであった。
「どういうつもりだ」
「何か企みがあるのか?」
「そんなものはないわ」
コンチャコーヴァは彼等とウラジミールの間に立って言うのだった。
「彼に手を触れることは私が許しません」
「ですが王女様」
「この者は」
彼等は王女に対して言う。明らかにウラジミールを信じてはいなかった。だがそれでもコンチャコーヴァは恋人を守ろうとしていた。ウラジミールは覚悟を決めていたがその彼を必死に守ろうとしていた。
そこにハーンが来た。ポーロヴェッツ人達は彼の姿を見て一斉に姿勢を整える。ハーンは彼等の間を通りウラジミールとコンチャコーヴァの前に来たのであった。
「事情はわかっている」
彼はまずはそう皆の者に告げた。
「公爵とルーシーの者達が逃げたな」
「はい」
「その通りです」
周りの兵士達が彼に答える。
「そして公子だけが残りました」
「如何為されますか?」
「この若者には手を出すな」
まずはこう皆に告げた。
「えっ!?」
「何もですか」
「そうだ」
威厳に満ちた声で皆に命ずるのであった。
「わかったな。何があっても手出しはするな、いいな」
「わかりました」
「それでは」
「見張りの兵は降格だ」
そのうえで今回の責任者の処罰を下した。
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