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『曹徳の奮闘記』改訂版
第九十一話
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「ふむ……移送は順調のようだな」

「当たり前や隊長。いくらサボるウチでもやる時はやるで」

「それを普段からしていればええのに……」

 俺は真桜の大砲隊の移送を手伝っていた。

「それで結局、四斤山砲は何門なんだ?」

「え? 報告書は一応送っといた筈なんやけど……」

「それは初耳だぞ」

「……ぁ〜多分ウチの机に紛れ込んだかもしれんわ……」

 おいおい……(汗)

「まぁもうそれは良いから。それで何門なんだ?」

「六十門や。けど、これは陸での運用やけどな」

「陸……ということは……」

 俺の言葉に真桜がニヤリと笑った。

「そうや。水軍用に二十門を作らせてるんや。一隻の左右に二門ずつの計四門で五隻や」

 ……マジでかよ……。

「……それだと水軍の歴史を変える事になるな。よくやったぞ真桜ッ!!」

「きゃッ!? ちょ、隊長ッ!?」

 俺は思わず真桜を抱き締めた。真桜が驚いているが今は喜びで一杯だな。

「これで少しは勝利に近づいたぞ」

「う、うん。分かったから降ろしてぇな。流石に恥ずいわ……」

「お、済まん済まん」

 顔を真っ赤にした真桜の指摘に俺は真桜から離れる。

「兎に角や。急いで移送しな」

「あぁそうだな」

 そして仲軍は赤壁にて布陣をした。対する曹操率いる魏軍の精鋭約六十万は烏林湾にて布陣していた。

「さて、問題は王双よ」

 烏林の魏軍陣内にて曹操は集まらせた諸将にそう言い放った。

「王双は仲軍の精神的存在。これを崩すのは容易ではないわ」

「ですが仲軍の中には元呉の兵達もいますし先の戦いで捕虜になっていた孫堅達がいます。呉は攻めこまれて降伏していますので仲を良く思ってないのではないですか?」

 荀イクはそう曹操に具申する。

「……桂花、何が狙いかしら?」

「仲軍に毒を仕込んではどうですか? 即ち仲軍と元呉軍を切り崩すのです」

 荀イクは仲軍と元呉軍を仲違いにさせてから一気に叩く作戦を提案した。

「……桂花、それは許可出来ないわ」

「し、しかし華琳様……」

「確かに桂花の策は妙案だと思うわ。でもね、私は王双と決着をつけなければならないのよ」

「……それでは正面からですか?」

「……正面からだと兵力の損耗が大きすぎる。仲軍には大砲があるわ」

「……そうなるとやはりこの策でしか……」

「………」

 荀イクの呟きに曹操は何も言わなかった。曹操自身もそれで行くのが良案だと思っている。

 だが、曹操は王双と決着をつけたかったのだ。不本意な事での戦いより正々堂々としたいという気持ちに押されてはいたが自身は魏の王である。
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