五話
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「いててて」
「大丈夫かの?」
心配するような声の方を向くと、そこには白髪の爺が鎧で身を包み、大鎚を腰に下げてこちらを見ていた。
「ああ、最近はこの程度じゃなんともならなくなったから大丈夫だ」
「あの高さから落ちて大丈夫とは、頑丈じゃのう」
「そりゃまあこの森に五年も住んでるからな、家が木の上だから寝相で落ちることだってよくあるんだよ」
俺が落ち葉を払いながら爺に向き直ると、何故か爺が驚愕な顔をして俺の顔を凝視していた。
「お主、その歳でこの森を五年も住んでおったのか?」
「ああ、ずっと修行してたが」
爺の真剣な顔に俺は少しうろたえながら答えると、爺は嬉しそうに顔をゆるめ、俺の肩をバンバンと叩きながら豪快に笑った。
「はっはっはっは、そうかそうか、この森で五年も修行か! そりゃあすごいことじゃ!」
爺のテンションの上がりように俺はかなり驚いたが、爺はそんなことにすら気づかず俺を持ち上げよう体を持とうとしてきた。
「そんな年じゃねえんだよ爺、さっさと手をどけろ」
が、俺だってせっかく体が大きくなってきたのにそんなことはされたくない。爺の持ち上げる力に抵抗し、重力と共同作業するように地面に踏みとどまる。
「ふむ、筋力はかなりあるようじゃの」
だが俺が必死に踏みとどまっているのにも関わらず、爺は涼しい顔で確認するように少しずつ俺を持ち上げようと力を上げていく。
「だからやめろっつってんだろ!!」
限界まで粘ったがまだ爺の方が強いようで、俺は踏みとどまるのをやめ、爺の身体にドロップキックをぶちかます。
「てめえさっきからどういうつもりだ!」
「すまぬすまぬ、悪気はなかったんじゃがのう」
俺の渾身のドロップキックにも、爺はケロッとしたようすで体勢を立て直し、にこやかな笑顔を絶やさない。
「それで、こんな森になんのようだ爺? ただの好奇心なんだったらさっさと出て行ったほうがいいぞ」
「儂もさっさと出たいんじゃがのう、昔ここに息子が住んでおったんじゃが、あやつ形見すら置いておらんかったのじゃ」
じゃから儂が探しに来たわけじゃ。と爺は語る。
「へえ、そりゃごくろうなこった。
じゃ、俺には関係なさそうだしこの辺で御暇させてもらおうかな――!?」
「つれないことをいうのう。体の不自由な爺を助けてやろうとは思わんのか?」
「体が不自由ならこんな森に入って来れるわけないだろ!」
「はっはっは、ごちゃごちゃいわず、はよういくぞ」
こうして俺は強引に爺に連行させられることとなった。
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