第二十八話「ケルベロスは本当は可愛い生き物なんです」
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やってくれやがったなあの犬っころ……!
傷は思ったより浅いのか痛みはあまりない。これならすぐに戦える!
立ち上がろうと足に力を入れて――まったく力が入らないことに気が付いた。いや、それどころか下半身の感覚がまったくない。
「ぁ……ぁぁ……っ!」
俺の側に走り寄って来たアーシアが目を大きく見開き、手で口元を覆い隠した。その蒼い双眸から涙が次々と零れる。
「イッセー、あなた……」
ケルベロスを警戒しながら近づいて来た部長がこっちを見て絶句した。
なんだよ皆、なんでそんな驚いてんの?
つーかいつまでも寝ていられないな。はやく起き上がらないと。
上半身を起こそうと首を動かして自身の身体を見下ろし、絶句した。
――アレ? なんで足が……下半身が、ないんだ?
頭に過った疑問はただ、その一言に尽きた。
† † †
「ごふ……」
【おい相棒! しっかりしろ!】
喉から込み上げてきた血を吐き出す。
失血のせいか急激に薄れてきた視界の中に確かに俺の下半身があった。
遠くに転がる、無残に引きちぎられた俺の半身が。
アドレナリンが過剰分泌されているのか、痛みは全く感じられない。
「イッセーさん! 治します!」
わざわざ俺の下半身を持って来たアーシア。切断面に合わせると手を重ねて癒しの力を発動させた。
緑色の優しい光が切断面を包み込む。が、しかし――。
「なんで……なんで治らないんですかっ?」
出血を弱らせるくらいで癒着するほどの効力はないようだった。
――グルァァァアアアアア!
轟く方向に視線を向ける。見ると部長たちがケルベロスを引き付けてくれているようだった。
部長と朱乃さんはその目に涙を浮かべながら憤怒の形相で苛烈な攻撃を繰り出し、いつもクールで無表情な小猫ちゃんも全身から怒りを漂わせながら黙々と拳を加速させる。
「なおって……治ってください! いや、死んじゃイヤです!」
アーシアが泣いてる……。くそっ、俺はまた、彼女を泣かせて!
【死ぬな相棒! こんなところで死ぬなんぞ許さんぞ!】
ったりめぇよ。なに当然のこと言ってんだドライグ……。俺が死ぬのは美女の胸の中って決まってんだ……。
やべぇ、なんだか寒気がして
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