第二幕その五
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程彼は愚かではなかったのだ。
「まさか御前は」
「そのまさかです」
またしても兄に言い返す。毅然として。
「兄上、ですから」
「わしを許さぬというのか」
「このままでしたら」
引くつもりはなかった。彼女も背負っているものがあるのだから。
「決して」
「わしを滅ぼしてでもか」
「例え兄上であっても」
やはり退かない。兄を睨み据えてさえいた。
「これ以上の狼藉は許せません」
「それが御前の考えなのだな」
「そうです」
やはりここでも退かなかった。まるでルーシーの大地そのものであった。今彼女は完全にルーシーを背負っていたのであった。だからこその強さであった。
「おわかりですか。それなら」
「わかった」
遂にウラジーミルも負けた。彼もルーシーを相手にはできなかった。
「ではここは大人しく従おう。それでいいのだな」
「はい。ご自重下さい」
穏やかな顔に戻って述べる。
「そうされればいいのですから」
「わかった。では今日はもう休もう」
ウラジーミルは席を立った。そうして妹に言うのだった。
「ではな」
「はい」
こうしてウラジーミルは宴を止めさせてその場から消えた。一人残ったヤロスラーヴナは沈痛な顔のままであった。その顔で述べるのであった。
「このままでは本当にロシアは」
彼女はここでもロシアを憂いていた。
「滅んでしまう。あの方がいなければ」
ここでも夫のことを想う。しかしまだ帰らず暗雲がルーシーの空に立ちこめ続けているのであった。それは何時晴れるかさえわからなかった。
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