黒幕
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に指示を出して、俺は街に繰り出す。
どの料理屋も賑わっているが、一部の店は廃れ閉店しているように見える。
ある料理屋を見つけ、中に入る。
「いらっしゃい。」
中にはほとんど客はない。
俺は一番近い席に腰を下ろす。
座ると思っていなかったのか、店主は驚いた顔をして注文を聞いてくる。
「お勧めの料理を。」
「か、かしこまりました。」
久しぶりの客だからか、店主は張り切った顔を浮かべつつ厨房に下がる。
と、前の相席に誰かが座った。
顔を見ると胡蝶だった。
「お前も抜けて来たのか?」
「あんな汚い食い方を目の前で見れば、誰だって食欲無くすよ。」
確かに苑意の食べ方は汚い。
俺は同意し、胡蝶も俺と同じ料理を頼む。
「それで何をするつもりだい?」
脈絡もない発言に少し驚いた表情を浮かべた。
「何か目的があってこの街に来たんでしょ?」
「よく分かったな。」
「縁の行動を見てたら勘付くよ。
さすがに目的までは分からなかったけどね。」
目的までばれたら本気で胡蝶に隠し事ができなくなる。
さすがに一人では手が回らないので、苑意に対しての容疑、そして今までの賊との関連性を教える。
「ふむ、賊が現れるのは私も疑問に思ってたけどね。
それで縁はあの男に容疑を絞っているんだね。」
「ここで資料を読ませてもらった結果、その線が濃厚になってきた。
まぁ、まだ確定したわけではない。
決定的な証拠が欲しい。
何名かの兵士に調査を依頼したが、まだ一つ頼めていないのがある。」
「それ、私がやろうか?」
内容を聞かずに胡蝶はそう答えた。
「いいのか?」
「あの男、気に入らないからね。」
至極単純な理由だった。
胡蝶は少し動物的な考えを持っているのだと、最近になって気づいた。
調査して欲しい内容を胡蝶に伝え終ると同時に、店主が料理を運んできた。
運んできたのはシンプルなラーメン。
合掌し、食べる。
「うん、美味い。」
「まぁまぁかな。」
そう言いつつも胡蝶は綺麗に食べ、俺は二人分の料金を店主に渡す。
「自信を持ってくれ。
この味ならきっとうまくやれるさ。」
根拠も何もないただの言葉。
それでも聞いた店主は涙を浮かべながら、お礼を述べた。
店を出て、胡蝶と分かれる。
「それじゃあ、くれぐれも気をつけてな。」
「ああ、分かっているよ。」
俺達は動き出す。
狐の尻尾を捕まえるために。
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