フェアリィ・ダンス-FORTUNES-
第五十四話
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としても結果は見えている。
剣術を継ぐものとして育ててきた武人肌の父とは、それを認めずに喧嘩することになってしまったが……あの事件のせいで、俺の剣道人生は全て狂ってしまったのだった。
俺の今までの十七年間を賭けたものは、一つのゲームで全て無意味なものと成り果ててしまったのだと、俺はもう諦観していた。
「……ナーヴギア、か」
そんな中見つかるヘルメット状の拘束具を見て、俺は少しばかりため息を漏らした……目的の物こと、病院に付けられた『一条 翔希』という俺の本名が書かれた名札がついたままのナーヴギア。
二年間に渡る酷使ですっかり塗装も剥げてしまい、もはや電源を付けることも無いので、今やただの趣味の悪い拘束具にしかなりはしない。
「くそっ……!」
俺はナーヴギアを頭上に持っていくと、我慢できずにナーヴギアをそのまま床に叩きつけた。
ナーヴギアにとっては運が良かったのか、床は畳であるせいで望むほど大破することはなく、直接床に触れた場所が中破した程度で済んだ。
これ以上破壊することも可能だったが、玄関に菊岡さんを待たせていることを思い出し、破片は無視して拾い上げて離れを出て行った。
雨足が強くなってきたが道場からもう物音はせず、道場にいた直葉はどうやら帰ってしまったようで、個人的には少し安心した。
傘を差しながら菊岡さんが待っている高級車に急ぐと、強くなってきた雨を気にせず優雅に車の中にいる菊岡さんを見て、若干急いだのが損なような気がしてきた。
「やあ、遅かったね一条くん。何だか可愛い子が出て行ったけど、もしかして君の彼女かい?」
「……まさか」
冗談めかした菊岡さんに付き合っている気分ではなく、適当に流して半壊したナーヴギアを手渡した。
そのナーヴギアを見た菊岡さんは少し驚いた表情を見せたものの、俺より激しくナーヴギアに怒りをぶつけた者はいるのだろう、特に何も言わずにナーヴギアを受け取った。
「それじゃあ、また用事があったら『偶然』来ることにするよ」
そんなことをうそぶきつつ菊岡さんの車は発進し、俺のナーヴギアはその車とともに俺から離れていく。
「リズ……」
天気とともに否が応でも下がっていくテンションの中、勝手に口から出て来たのは、今どこにいるかも解らない親友の名前。
空は未だに、曇天のままだった。
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