暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
フェアリィ・ダンス-FORTUNES-
第五十四話
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れている。

「調子は良いよ。……まだ生きてるという意味ではね」

「……ブラックジョークを聞きたいんじゃない」

 菊岡さんの趣味の悪い言葉を静かな怒気を込めながら聞き返すと、菊岡さんの表情に嫌らしい笑いが浮かんだ。

「ごめんごめん。君はこういうジョークは嫌いなのかい? ……まあ実を言うと原因は不明。やってるのは茅場晶彦に次ぐ天才なのかもしれないね」

 その茅場晶彦に次ぐ天才という評価から、菊岡さんの『今回の事件の首謀者は茅場晶彦ではない』という考えは、茅場晶彦がそんなことをしないと考えている自分にはありがたいことだった。
何かの根拠があるわけでは無かったが、今回の昏睡事件は茅場晶彦がやっているとは、どうしても俺には思えなかった。

 しかし俺がいくらそんなことを思おうとも、そんなことは蚊帳の外にいる俺には何の関係もないし、何の力があるわけでもないのだ。

 現実では何の力もない高校生――その上高校に入ってもいない――自分にとって茅場晶彦を直接止めた者だろうと、もうSAO事件に関わることは無いだろう。

「それで結局、何の用なんです?」

 『偶然』来た訳でもないことがバレていることは、菊岡さんももう解っているだろうので、さっさと本題に入ることを促した。

「偶然だって言ってたのに……まあ良いかな。本題は別に単純さ、君の《ナーヴギア》を回収しに来た」

 俺をSAOの世界に誘った憎むべき悪魔の機械であり、二年間SAOに留め続けた恩ある戦友でもある、という矛盾した機械――《ナーヴギア》。
俺には再び被ることも直視することも出来ず、そのまま押し入れに入れているアレを、どうやら菊岡さんは回収しに来たらしい。

「SAO事件も沈静化して来たからね。そろそろあの機械を回収する頃合いってことになったのさ。……まあ一部の人は、渡してくれなくて困ってるけど」

 あの悪魔の機械をわざわざ持っているとは奇特な奴もいたものだ、と思っていると車の駆動音が止まり、外を見てみると慣れ親しんだ自分の家があった。

「それじゃあ待ってるからさ、ちょっとナーヴギアを持ってきてくれないかな」

「解った……ちょっと待ってください」

 普段の口調と皮肉気な言葉が混じった、対菊岡さん用の口調で車を出ると、我が家の無駄に広い門の横の扉を開いた。

 俺の実家は近所では有数の剣道場であることを自負しており、母屋である日本家屋の他に、ちょっとした剣道場が敷地内にあるのだった。
俺のような、当時中学生の者やそれ以下の子供たちの剣道少年やら少女に、剣道を教えていたりもする。

 今日は確か道場は休みであったし特に用事もなかったので、道場に立ち寄る気はしなかったのだが……

「……物音?」

 物音というよりも気配
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