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SAO−銀ノ月−
フェアリィ・ダンス-FORTUNES-
第五十四話
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を遂げたのだった。

「おーい、一条くん!」

 ゆっくりと雨の中を歩いていた俺に、背後からそんな呑気な声と共に、車のクラクションが鳴らされた。
何となく人物を察しながらも背後を見ると、一目で高級と解る黒塗りの車から、怪しい公務員が顔を覗かせていたのだった。

「……菊岡さん」

 前述の怪しい公務員こと、SAO事件の対策本部のお偉いさんであった、菊岡誠二郎が相変わらず怪しい笑顔で笑いかけてきていた。
一見爽やかな好青年であるものの、どことなくその眼鏡をつけて笑う姿は、事件の黒幕のような印象を抱かせる。

「やあ偶然だね。家に帰るなら乗っていかないかい?」

「遠慮しときます。怪しい人の車に乗っちゃいけないって小さいことから言われてるんで……と、言いたいところなんですけどね」

 菊岡さんに教えられたアリシャの墓参りに行った後に、その菊岡さんが乗った車が後ろから来るとは良く出来た偶然だが、まだまだリハビリが終わったばかりの身としては歩くのは辛い。
ここは遠慮なく『偶然』来た、菊岡さんの車に乗せてもらうとしよう。

「一条くんの家は所沢の方だったね。少し遠いから、それまでお話でもしないかい?」

 部下らしきスーツを着た青年の運転手に車の発進を命令しながら、菊岡さんは何やら高級そうなタブレット端末をしまい込んだ。

 SAO事件が終結していくらか経った日、茅場晶彦とSAO内で最後に会話したという俺を尋ねてきたのも、この菊岡さんであった。
茅場晶彦のことを話す代わりに、SAO事件のことで解ることなら何でも話すという――ただし生きてるプレイヤーのプライバシーは除く――菊岡さんの契約に同意し、俺はギルド《COLORS》の皆のことを知った。

 SAO事件対策のことやギルド《COLORS》のこともあり、菊岡さんには感謝しているのだが……何故だかこの人に全幅の信頼を寄せる気にはなれなかった。

「そういえば、もう家に届いてるかな。学園のことは」

「ああ、SAO事件に巻き込まれた学生だけの学園を作るとかいう」

 近いうちに廃校を再利用してSAO事件に巻き込まれた学生用の、特別支援学級とやらが作られるらしく、確か――幸か不幸か――わりと家の近くにその校舎予定地があるのだった。

「なんだかイマイチ感動が無いね、君は。もう少し喜んでも良いんじゃないかい?」

「流石に、まだ解決していないのに喜べない。……昏睡者の調子はどうなんです?」

 SAO事件の解決していない事例の一つ――各地で目覚めないプレイヤー達のことだ。

 昏睡者という名の通りにクリアしても目覚めていないプレイヤーが各地で後を絶たず、世間では茅場晶彦がまだ見つかっていないためか、『茅場晶彦の野望はまだ終わっていない』などと揶揄さ
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