第四十八話 決戦(その七)
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勧告するためだ。最高評議会議長たる卿に降伏を勧告するのは帝国軍最高司令官である私の務めだろう』
「し、しかし、君はウルヴァシーで……」
また相手が笑った。楽しくてならないといった笑い声だ。
『ブリュンヒルトがウルヴァシーに有るからと言って私が乗っているとは限らない』
「……入れ替わったのか! 卑怯だろう!」
入れ替わった? クブルスリーの怒声に愕然とした。笑い声が更に大きくなった。
『卿らは私を戦場で殺す事で帝国の分裂を狙った、そうだろう? 残念だがその手には乗らぬ』
……読まれていた。こちらの策は読まれていた、裏をかかれたという事か……。同盟は、民主共和政は……、目の前が真っ暗になった。
『それにしても惜しかった、あの男がいなければ私はウルヴァシーに居たかもしれない。そうなれば卿らにも勝機は有ったのだがな』
「あの男?」
あの男とは? まさか……。
『宇宙一の根性悪にしてロクデナシだ。大神オーディンもあの男からは眼を逸らすだろうな』
「……黒姫か……」
私が呟くとローエングラム公は目を見張ってから大きな声で笑った。
『卿もそう思うか、気が合うな、レベロ議長。卿とは仲良くやれそうだ』
黒姫、あの男がローエングラム公をウルヴァシーで戦う事を止めたと言う事か……。同盟は敗れた、帝国にでは無い、あの男に敗れた……。
『安心して良い、卿らを殺すつもりは無い。それに私は自由惑星同盟の存続は許さぬが民主共和政の存続は認めるつもりだ』
民主共和政の存続は認める? 思わずクブルスリーと顔を見合わせた。彼も訝しげな表情をしている。
「それはどういう事だ?」
『それを話す前に先ずは降伏する事だ。このままではウルヴァシーで無駄に死者が増え続けるだろう。それを止める事が出来るのは卿だけだ』
「……」
『良いのか、私がここに居る以上、帝国の敗北は無い、そして卿らの勝利も無い……』
クブルスリーが力無く首を振っている。負けたのか……、本当なら最高評議会で決を採るべきだろう。だが、その間に無益に人が死ぬ……。
「……分かった、降伏する」
ローエングラム公が満足そうに頷いた。
『宇宙艦隊に降伏を命じて貰おう……』
クブルスリーに視線を向けた。彼が溜息を吐く。
「ビュコック司令長官に降伏を命じます」
「頼む……」
『ではレベロ議長、話をしようか』
宇宙暦 799年 5月 8日 ガンダルヴァ星系 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー
戦況は良くない、第十三艦隊は帝国軍を攻めきれずにいる。一度はローエングラム公を斃したと思った。しかしそうでは無かった。そしてローエングラム公が何処に居るのか分からない。第十三艦隊は当ても無く帝国軍を攻めている。その事が艦隊の士気を恐ろしく下げ
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