姫提督から見た帝国内乱
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
妃となる為に。
母方の遺伝子は教えられていませんが、この容姿から察していただければと」
(まるで競走馬の配合だな……)
とヤンが思ってしまうのをどうして責められようか。
血脈による富の管理と容姿や肉体などの好条件を遺伝レベルで作り出して次世代を造り、その次世代が家の存続の為に更に……
人為的科学技術がなければ人の世が延々と行っていた事の焼き直しでしかない。
「ちなみに、私の准将としての階級も寵妃の為なんですのよ」
「またどうして?」
「花畑から花を探すのと、荒地に咲く一輪の花を摘むのはどちらが簡単だと思います?」
「なるほど」
専制国家であるがゆえに、女の争いは民主主義国家であるヤンが想像する以上に深く陰湿である。
そこで確実に勝ち残る手段として軍人を選ぶとは、目の付け所が違うというか。
同時に、実力主義が蔓延している帝国軍において、飾りとはいえ准将位まで来た彼女が無能とも思えない。
これがコーディネーターとしての才能か彼女の資質かはヤンにも分からなかったが。
「失礼ですが、帝国正規軍に属していながら、なぜ亡命を?」
ヤンの質問に、エリザベートは当事者として思い出す顔で答えた。
「おそらく、同盟における帝国の内乱は一くくりにされていると思うのですが、あれは複数の対立が連鎖的に繋がったに過ぎないのですわ。
ブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯の対立が軸にはなっていますが、宮廷内でも我が父カストロプ公が帝国宰相リヒテンラーデ候の追い落としを図っていましたし」
財政崩壊の帝国の再建に尽力したリヒテンラーデ候はその功績で帝国宰相の地位についていた。
その下で実務を担当していたカストロプ公がその追い落としを図り、娘を皇太子の寵妃に差し出す。
ヤンの頭の中で少しずつ帝国内の権力闘争が整理されてゆく。
何しろ有史以来、権力闘争というのは戦争と並ぶ歴史の花である。悲しい事に。
「もしかして、皇太子も一枚噛んでいた?」
ヤンの質問は少々踏み込みすぎたものだったらしい。
エリザベートは微笑を浮かべたままその質問を聞き流した。
「クロプシュトック侯については私もよくは分かりません。
ルードヴィッヒが倒れたあのテロが発生した時、私はルードヴィッヒとの密会の為に離れてあの場に居なかったのです。
それが私の命を救いました」
エリザベートの質問にヤンは警戒を強める。
寵妃として差し出されたはずなのに、皇太子のそばを離れ、正規軍として動いた。
そんな芸当ができるのか?
「テロの首謀者がクロプシュトック侯であり、その狙いがルードヴィッヒとブラウンシュヴァイク公を狙ったものである事はすぐに判明しました。
そして、クロプシ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ