第伍話 《真っ黒》〜中編〜
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るにも関わらず、背を向けてツタが絡まったパイプオルガンの前に立っているだけのシスターに訝しみ、扉の前で止まっていたシキが一歩、二歩、そして三歩目を踏み出したところで、教会の扉が勢い良く閉まった。
「なっ……!」
「…………とりあえず、お礼を言わなくてはなりませんね。有難う御座います。三人のバグプレイヤーを収めるギルド《傷物の剣》のギルドリーダー、シキさん」
そこでようやく、振り返って彼女はシキを見た。
その目はシキを捉えながらも、全く違うものを捉えているようだった。
「お前、何者だ?」
「貴方、初めて会った時から思っていたのですが、面白い『起源』を持ってますね。殺意、ですか」
くすくすと口元を押さえながら笑うシスター。
殺意。
自分の起源、心の最奥の自身が持つ、認めたくない自身の本心。
それを言い当てられ、シキは少なからず動揺した。
「ああ、そういえば、まだ答えていませんでしたね。私が何者か、ですか」
シスターは苦笑し、
「名前は、『ナイア』ですよ。N・A・I・Aでナイアです。あの男が言うには、起源は混沌、らしいですね。まぁ、NPCではありませんよ、勿論プレイヤーでもありません」
そこまで言って、唐突に口をつぐんだ。
「あぁ、ここから先はまだ言ってはいけないのでしたっけ。あの男の脚本には微塵も興味無いですが、あの男に少しばかり義理を果たすくらいはしてやりましょうか。行動原理としては、こんなところでしょうか」
シスター、ナイアはつまらなさそうに言って、右手をぶん、と振った。
その動作の数瞬後、ナイアの頭上の空間が歪み始める。
歪みは次第に大きくなり、空間をガラスを壊すかのように破壊し、一つのモノが現れた。
ソレはナイアに付き従うかのように彼女の周囲を旋回した後、彼女の近くに浮かんでいる。
「ふふ……。可愛い子ね」
言いながら、ナイアは恍惚とした表情でソレの表面を撫でる。
ソレは、見たところ、黒塗りの金属で出来た大きな赤の逆十字が描かれている棺桶だった。
「恐ろしいですか?」
「…………さあな」
内心、シキは驚いていた。
ナイアと名乗るこのシスターは、シキの心中を見事に当てている。
「図星? まぁ、とにかく、私は貴方を殺します」
「……そうかよ。で、その棺桶で戦う気か? 確かに鈍器としては優秀そうだな」
「違うに決まっているじゃないですか」
ナイアはせせら笑う調子のシキの問いを即座に否定する。
その声は呆れた風な声音よりも、子供を諭すような声音に似ていた。
ナイアが指揮者のように右腕を振ると、浮遊を続けていた棺桶の蓋が独りでに開き、中から巨大な剣が現れた。
にやり、とナイアは微笑みを頬が裂けんばかりの笑みへと変化させ、剣の取っ手を掴んで一気に引き
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