第伍話 《真っ黒》〜中編〜
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たと同時、裏路地から街へと続く道からシンとアティが向かってきた。
「お疲れさん。どこにあった?」
「店の前ですよ。店主さんとお話して、それからお店を出たところに落ちていたんです」
アティが腰のポーチからネックレスを取り出し、シキに手渡す。
そのネックレスは銀で作られており、その鎖で出来たネックレスには逆十字が飾られていて、別段聖職者らしくないという印象は受けなかったが、シキの頭の隅には何かが引っかかった。
「(まぁ……気のせいだろうな)」
自分の中でそう決着をつけ、ネックレスを届けるべく教会へと足を進める。
○●◎
「君は、何の為に生まれたと思う?」
「……何を突然」
相も変わらない無表情の男、キシマと劇役者風の男が暗闇の中で会話していた。
「ふむ……。君はどうかね?」
「どうかしらね……。案外、死ぬ為に生まれてきたんじゃないかしら?」
そして、今日は珍しく青髪の少女がいた。
「そういう貴方はどうなの?」
「当然、世界を救う為だ」
恥ずかしげもなく、劇役者風の男はごくごく真面目な顔で笑いながら言う。
「ところで、何故君がここにいるのかね? 君の居城はあの部屋だろうに」
「だってあそこにはチェス盤があるだけだもの。貴方達とお話してた方が面白いわ」
くすくす、と少女は笑う。
「だが、それがバレた場合、私は……?」
「死ぬかしらね」
何ということだ……、と膝を付き愕然とする劇役者風の男。
「…………しかし、俺としては別に構わないのだが、お前は何故あの場所に留まっているのだ?」
「んー……。留まってるというか、そうね。あの人風に言うなら、『表舞台に上がれないだけ』かしらね」
今だうなだれ続ける劇役者風の男を指さす青髪の少女。
「表舞台に……?」
「そう。まぁ、彼は永遠に私を表舞台に上げる気はないだろうけど」
不貞腐れたように言って、深い溜息を吐き出す。
そこで、少女はぴくり、と耳を動かした。
「ん。んん? 誰か、動き出したようね」
「…………誰だ?」
「おそらく彼女だろうな。私の意思ではないが……まぁ、この舞台はまだ始まってからそう長い間経っていない。多少の誤差程度なら許されるだろう」
居住まいを正し、劇役者風の男は微笑みを絶やすことなく言った。
その微笑みには底知れぬ何かがあり、見る者に戦慄を与える奇妙な笑みだった。
○●◎
「よう、シスターさん。持ってきたぞ、ネックレス」
言って、シキは指にかけたネックレスを見せながら、教会の扉をくぐる。
今現在、この教会にはシキとシスターの女性しかいない。他三人は、シキの『届けるぐらいなら一人で充分だ』という発言で主街区の宿屋で待機している。
「………………」
「…………? おい、アン――――」
話かけてい
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