第百二十九話 一月その五
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「これは破らぬ」
「ですな、一月です」
「その間待っていましょう」
気になることはあってもそれでもだった。
浅井家は様子を見守り動かないことにした、そして。
信長は岐阜に信行と信広を呼んでいた、そのうえで二人に話したのである。
「一月待ちじゃ」
「若し朝倉家から何も言って来ないからな」
そうなればだというのだ。
「戦をする。御主達はじゃ」
「都に、ですな」
信広が応える。
「あの場を守れと」
「その通りじゃ」
信長も笑ってそうだと返す。
「そして何かあれば近江の方に兵を出せ」
「それはどういうことでありましょうか」
信広は長兄の煎あの言葉にすぐに問返した。
「何故」
「万が一ということもある」
敗北、このことだ。
「そのうえで越前から逃げる次代にな」
「我等が都から兵を率いて出てそのうえで、ですか」
「兄上や他の者達を」
「迎えて欲しいのじゃ」
その為に兵を出せというのだ。
「わかったな」
「わかりました、では」
「その時は」
「それは相当な時じゃ」
それこそ信長の所在がわからなくなっている場合のことだ。
「そうした時以外は動かなくともよい」
「そのまま都にいて、ですか」
「守れと仰るのですな」
「そうじゃ」
信長もすぐに答えを返す。
「都は落ち着いてきたがそれでもな」
「ではその時も」
「その責を全うさせて頂きます」
「頼むぞ。都はおろそかには出来ん」
到底だというのだ。
「そのことはな」
「ですな。それでなのですが」
ここで信行が言う。
「一つ気になることがあります」
「あの二人の坊主のことじゃな」
「はい、そうです」
兄の信長にも応える。
「崇伝、そして天海の二人です」
「確かにどちらも不気味じゃ」
「その二人の動きがお気になられますか」
「妖僧の類なら厄介じゃ」
妖術を使うという意味ではない、人としてそうした存在ならばというのだ。信長は術の有無をここでは関係なしとしているのだ。
「だからじゃ」
「あの二人の僧を警戒すべきじゃな」
「そうさせてもらいます」
信行もこう言ったのだった。
「では」
「御主は出来るだけ都から離れるな」
これは信行に直接告げた言葉だ。
「そのうえで公方様とその周りから目を離すでないぞ」
「畏まりました」
「そして三郎五郎、御主じゃが」
「はい」
今度は信広への話になる。
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