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八条学園怪異譚
第三十三話 踊る本達その五
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「あんた達は」
「もう子供じゃないから」
「だからなのね」
「あんた達もう赤ちゃん産めるでしょ」
 かなりダイレクトな言葉だった、しかし花子さんはあえてこう言ったのである。
「そうでしょ」
「ちょっと、その言い方はないでしょ」
「赤ちゃん産めるって」
「けれど実際にそうじゃない、身体はね
 心はともかく、というのだ。
「赤ちゃん産めるわよね」
「それはね、私も」
「私もだけれど」
 このことは否定出来なかった、女の子ならいつも誰よりも自覚していることだからだ。
「まだそうした経験ないけれど」
「それでもね」
「経験したとかはいいのよ」
 そういうことはとりあえず、というのだ。
「産めるでしょ」
「ええ、そういうの小学五年できたし」
「それからはね」
「そうなると見えないの、男の子もね」
 男は男で彼等の身体的な変化が起こってというのだ。
「あの娘は見えないのよ」
「あの娘なのね」
「そう、あの娘よ」
 花子さんは座敷わらしをこう呼ぶのだった。
「私達友達なのよ」
「ふうん、そうだったの」
「あんた座敷わらしさんと友達だったの」
「妖怪としての年齢も近いしね」
 それでだというのだ。
「私達仲がいいのよ」
「年齢近いって」
「あんた戦争中に出て来たのよね」
「座敷わらしさんって江戸時代からいたんじゃないの?」
「それよりも前なんじゃ」
「座敷わらしにも色々なのよ」
 その座敷わらしの事情の話にもなる、妖怪達のそれぞれのだ。
「座敷わらしも何人もいて、あの娘は戦争中にここに出て来たのよ」
「東北から来たんじゃなくて」
「東北からこの学園に来た人達がこの学園にもいればいいって思ってそこから出て来たのよ」
 そうなったというのだ。
「それがあの娘なのよ」
「つまりここの座敷わらしは東北から来た人が産んだ?」
「そうなるの?」
「出て来たを産むって言うのならね」
 そうした解釈が出来るというのだ。
「そうなるかもね」
「その辺りはキジムナーさんとは違うわよね」
「ええ、そうよね」
 ここでまた二人で話す。
「あの人達はガジュマルの木が植えられるのと一緒にこの学園に来たから」
「そこは違うわね」
「妖怪が出て来る事情は色々でしょ」
 花子さんは二人が既に知っていることをここでもう一度言った。
「幽霊さんでも古墳の人とグラウンドの人と日下部さんは違うし」
「ここにいる事情もね」
「それぞれ違うわね」
「そこは妖怪も同じでしょ、けれどね」
 ここでまた言う花子さんだった。
「あんた達があの娘に会うにはね」
「何か方法あるの?」
「座敷わらしさんと会えるの?」
「博士に聞けば知ってるかもね」
 かなり他力本願な返事だった。
「ひょっとしたらね」

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