TURN76 青い石の力その九
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「味がないからね」
「味がないのですか、エイリスの料理は」
「そうなのですか」
「そうなんだよ、調味料は塩と酢位しかないんだよ」
「あの、それでは味は」
「何時の時代の料理ですか?」
「しかも焼き加減とか茹で加減とかがわかってなくてね」
これも駄目だった。
「もう何もかもが酷いものなんだよ」
「それでまずいのですか、エイリス料理は」
「そうなのですね」
「食べない方がいいよ」
ヒムラーは過去を思い出して唇の左端を歪めていた。
「とてもね」
「だから王族や国家であの料理に喜んでいたのですか」
「普段口にしている料理があまりに酷く」
「それでなのですか」
「そうなんだろうな。いや、俺が作らせたにしても」
それでもだと言うヒムラーだった。
「酷い味だったよ。シェフもあんなまずい料理を作るのは不本意だっただろうね」
「でしょうね、あれは」
「酷いものでしたから」
「お疲れさんと言っておくよ。ぴえとろ統領にはね」
彼についても言及する。
「後で差し入れをしておこう」
「はい、パスタのですね」
「それをですね」
「あんなまずいものを食べさせて悪いことをしたよ」
だからだというのだ。
「じゃあそういうことで」
「後でシェフに作らせましょう」
「パスタを多量に」
「俺も食べるよ」
ヒムラーもだった。
「口直しにね」
「そのパスタをですね」
「それを」
「味について頼りになるのはイタリンだけだよ」
この国だけだった、辛いことに。
「他の国は期待できないな」
「一応オフランスも戻ってきていますが」
「それでもですね」
「あの国も今国家がいないからね」
だから完璧ではないというのだ。
「ベルギーのお菓子とかポーランドがいるにしても」
「味はイタリンですね」
「あの国が頼りですね」
「日本がいた時が懐かしいかな」
ヒムラーも何度か和食を口にしている、その味はだというのだ。
「生ものは抵抗があったけれどね」
「それでも全般的にいい味でしたね」
「日本の料理は」
「懐かしいよ、今では」
「全くです。料理も大事ですから」
「何とか充実させたいですが」
「今の顔触れだと難しいからね」
今のソビエト、そして相変わらずのエイリスではだった。
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