第一章 土くれのフーケ
第八話 士郎の使い魔としての一日
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「ミス・ロングビルに会えただけで、ここに来た甲斐はあったな」
士郎の言葉に真っ赤になって驚き固まったロングビルを見た士郎は、苦笑しながらロングビルの横を通り過ぎて宝物庫に向かって足を進める。
そして士郎はロングビルの横を通り過ぎる一瞬、その耳元に囁いた。
「―――やめておけ」
「っ!?」
告げられた言葉にロングビルが驚き振り返った時には、すでに士郎の地下の闇へと姿を消した後であった。
その日の夜。
調べもので遅れてしまった士郎は、急いでルイズの部屋まで向かっていると、寮の廊下をキュルケの使い魔のサラマンダーが塞いでいた。
フレイムは士郎に気付くとちょこちょこと士郎の方へ近づいてきた。
「どうしたフレイム?」
士郎が問いかけると、フレイムは『きゅるきゅる』と人懐っこい感じで鳴き声を上げた。
そして、士郎の外套をくわえると、ついてこいというようにキュルケの部屋に向かって士郎を引っ張っていく。
士郎は何か用があるのかと思いついていくが、その自身の経験から何か悪い予感を感じながらも、キュルケの部屋のドアをくぐった。
士郎が部屋に入ると、部屋の中は真っ暗であった。
しかし、サラマンダーのフレイムの周りだけぼんやりと明るく光っている。
士郎が所在無さげに立っていると、不意に暗がりの向こうからキュルケの声がした。
「―――扉を閉めて?」
士郎は逆らう事なく言われた通りにする。
「こちらにいらっしゃって」
「その前に明かりをつけてもらってもいいか」
キュルケが指を弾く音が聞こえた。
すると、部屋の中に立てられたロウソクが一つずつ灯っていく。士郎の近くに置かれたロウソクから順に火は灯り、キュルケのそばのロウソクがゴールだった。
道のりを照らす街頭のように、ロウソクの灯りが浮かんでいる。
ぼんやりと浮かび上がる淡い幻想的な光の中。ベッドの上に、ベビードールのみ身につけたキュルケが悩ましげに横たわっていた。
「そんなところに立っていないで……さあ、こちらに」
キュルケが色っぽい声で誘う。
士郎は自身の直感が正しかったことを理解すると同時に、『さて、どうするか』と、腕を組むとこれからこの状況をどう脱するか考え始める。
「どうなさったのかしらミスタ。こちらに来ていただけないの?」
「すまないがな」
「そう、なら私から行くわ」
士郎の断りの言葉を聞くと、ベッドから降りたキュルケが士郎に近づいていく。
「あなたはきっと、あたしをはしたない女だと思っているのでしょうね」
「―――キュルケ」
「でも、どう思われてもしかたがないの。わかる? あたしの二つ名は『微熱』」
「まあ、耳に
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