第一章 土くれのフーケ
第八話 士郎の使い魔としての一日
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士郎はフレイムに近づこうと足を向ける。しかし、サラマンダーは尻尾を振ると口からわずかに炎を吹き上げ、さっさと踵を返して逃げてしまう。
「?」
尻尾の先が見えなくなるまで見送った士郎が、疑問符を浮かべ首を傾げた。
士郎が図書室でサラマンダーを見送ってから暫らく過ぎた頃、ロングビルは学院長室の一階下にある宝物庫の前にいた。
ロングビルの目の前には鉄の巨大な扉があった。扉には太い閂がかかっている。閂はこれまた巨大な錠前で守られている。
そこには、魔法学院成立以来の秘宝が収められているらしい。
ロングビルは身長に当たりを見回すと、ポケットから杖を取り出し、呪文を唱え始めた。
そして、詠唱が完成するとともに杖を錠前に向けて振ったが、錠前からはなんの反応も音もしない。
「……まあ、ここの錠前に『アン・ロック』が通用するとは思えないけどね」
くすっと妖艶に笑うと、ロングビルは自分の得意な呪文である『錬金』の呪文を唱え始めた。
そして先程と同じように詠唱が完成すると、杖を錠前に向けて振るう―――が、錠前にはやはり何の変化はない。
「スクウェアクラスのメイジが『固定化』の呪文をかけているみたいね……この強力な『固定化』、もしかしてオールド・オスマンが……」
ロングビルはそう呟くと階段を登り始めた。
私の実力では、あの扉を開けることは出来ない……後残る方法は外からゴーレムで壁を破壊するしか……。
どうしたら宝物庫の中に入れるかどうかを考えながら、階段を登っているロングビルに影が差した。
ロングビルはそれに気付かず階段を登り続けていたが、考えに集中していたことから足下がおろそかになり、階段を踏み外してしまう。
ロングビルは反射的に手を伸ばすと、誰かに掴まれて体を支えられた。
「―――えっ?」
「大丈夫か?」
―――えっ、エミヤシロウっ!? どっ、どうしてここにっ?!
内心慌てふためきながらも、ロングビルは表面上は落ち着き払った様子で士郎に感謝を告げる。
「あ、はい。ありがとうございます」
士郎に支えられたロングビルは、体勢を整えると士郎の手からゆっくりと離れる。すると士郎とロングビルは一定の距離を保って見つめ合った状態になった。
「ミスタ・シロウ。何かここにご用事が?」
「いや、ここに宝物庫があると聞いてな。どんなところか気になってんで来てみたんだが。そう言うミス・ロングビルはここに何か用事が?」
「わ、私は宝物庫の扉の確認をしに来ただけです。でも、鍵がないのに宝物庫に行っても見て楽しいもの何て何も無いと思いますよ」
「ん? いや、そんな事はない」
ロングビルの言葉に士郎は首を振ると笑いながら言った。
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