マザーズ・ロザリオ編
過去編
過去編―西暦2020 年春夏―
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た。
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「……………」
木の若葉がこすれ、涼しげな音をたてる。気温は次第に上昇し、半袖でも過ごせる気候だ。
「螢〜!!」
何時もの時間、何時もの場所。律儀に時間通りにやって来た螢を木綿季は太陽のような笑顔で迎えた。
「待った?」
「うん。待った!!」
「………すまん」
釈然としないものが胸の内にあったが、無邪気な笑顔で堂々と言われてしまうと言い返す気にもならない。
「ランはどうした?」
ランとは木綿季の姉、紺野藍子のことだったが、何度か会う内に『ラン』と呼んで欲しいと言われたため、そうしている。
「お姉ちゃんは今日は家に居たいんだって。『ごめんなさい』って言ってたよ」
「そっか」
別に珍しい事ではない。木綿季と比べると、ランはおとなしい。いや、木綿季が元気すぎるというのもあるが。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
行き先はデパート。木綿季のお母さんに頼まれたお使いだ。
……ついでに遅くならない程度に遊んでこい的な事を言われているが……。
(……考えてみれば、木綿季の趣味とか好みとか知らないな)
足早に歩き始めた木綿季を追いかけながら、早くも先行きが不安になって来たのだった。
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肉、野菜、木綿季の希望でマシュマロ(これは自腹)を買って、サービスカウンターからデリバリーの手続きを行う。小学生の運べる量で無いが、だからといって速達便を使わせるという木綿季母の意外な大盤振る舞いには多少唖然とするものがある。
何でも父母共々それなりの家柄のようで、木綿季の家も標準より大きい。
小学生がサービスカウンターでデリバリーの手続きをそつなくこなすというシュールな光景に対応した店員は額に冷や汗を掻き、手がおぼつかなくなっていた。
それでも約5分程で手続きを終え、近くで待っている筈の木綿季を探すが―――、
(……いねぇし)
基本自由気儘な木綿季は興味のある物につられて何処かへ行ってしまう。以前、縛り無しの隠れんぼをした時は死に目に合った。勿論、俺が。
―チリン……
「…………?」
妙に気になる風鈴の音がしてそこに行くと、目をキラキラさせながらくるくると回る風鈴を眺めている木綿季を発見した。小さな扇風機に煽られた幾つもの風鈴が涼しげに共鳴する。
「…………っ」
楽しげにそれを眺める木綿季の笑顔を吸い寄せられるように見入っていたのを自覚し、フル
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