崑崙の章
第4話 「治るって……医師いらねぇじゃん、これ」
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られないような目で俺を見てくる。
いや、だってさあ。
誘拐なんて営利目的がほとんどだろ?
殺害するならさっさと殺すだろうし、上司への怨恨なら縁のない太守より、家族狙うだろ、普通。
それで営利誘拐なら何らかの要求があるのだし、殺したら目的達成できないじゃん。
連絡手段に電話なんてもんがあるわけじゃないし、連絡手段も時間かけるものならたった一日でどうこうなるわけでもないだろ。
つまり、一日ぐらいなんでもない、というだけの感想だったのだが。
「で、話は戻しますけど……一日程度ならまったく問題ないでしょう。早ければもう城に要求は来ているかも知れませんけど……太守が攫われたのなら一文官では判断できないでしょうし、まあ伝令出している頃ですかね?」
「……となると、洛陽……あるいは、都である江陵に急使を出している頃かもしれんな」
「要求が来ていれば、ですけどね。厳顔さんが取り戻そうとしたことは、相手にとってもイレギュラー……不測の事態でしょうし、改めて要求を伝えてくるかもしれません」
「むう……」
まあ、洛陽に直接ってのはなさそうだけどな。
面子を気にする中国じゃ、いくらトップが今そこにいるとはいえ、洛陽という国の中心に地方の不祥事を注進にいくバカはいないだろう。
まずは都である江陵に伝達、その上で判断を仰ごうとするだろうな。
「厳顔さんは、ここの太守とはお知り合いで?」
「……わしはここの西にある巴郡の太守じゃ。以前、荊州刺史である劉表殿に江賊のことで恩があっての。黄巾討伐で遠征中に、近辺で不穏なことあらば援軍に来ると約定しておったのだ」
「なるほど……それで軍を率いておられたのですね。つまり、以前から厳顔さんと江賊との間での怨恨の線もあるか……」
可能性は薄いけどな。
「わしが……狙われたのだと?」
「いえ、あくまで可能性です。もし、それが関わってくるとしたら……要求の方にでしょうけど」
「要求に?」
「ええ……もしかしたら厳顔さんの首を差し出せといってくるかもしれません」
「なっ!?」
厳顔さんが驚いている。
でも、ありえない話じゃないんだよな。
太守の誘拐は、ここと江賊の問題だろうけど、江賊にとって厳顔さんも不倶戴天の敵。
その上、太守誘拐で誘拐犯の何人かが、厳顔さんに殺されている。
ならば……身代金はもとより、厳顔さんの首、あるいは介入させないことを条件にしてくるかもしれない。
「当然、厳顔さんは劉表の……劉表様に仕えているわけじゃない。命まで対価にさせても応じられないでしょう。だから、介入させないことを条件にしてくる可能性はありますね」
「もしや、儂が追い返されようとしたのも、既にその要求が来ていたから……?」
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