崑崙の章
第4話 「治るって……医師いらねぇじゃん、これ」
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その時を楽しみにしておきます」
北郷さんは、そう言って手を差し出します。
わたくしは、その手を取って立ち上がりました。
(まるであの人と初めて会ったときみたい)
姿も状況も違うのに、そんな風に感じた。
「まあ、本当に華佗に会えたのは僥倖でした。まさかあの農家が、五斗米道の者だとは……」
「違う! ゴットヴェェィドー、だ!」
「あ、ああ。ゴットヴェェェィドーね。まあ、どの道助かったよ。ありがとう、華佗」
「礼には及ばん。お前の兄貴はまだ目覚めないのだからな」
「だからそれはもういいんだって。話は聞いているから」
……お兄さんが目覚めない?
北郷さんも大変な事情を背負ってらっしゃるのかしら?
「まあ、ともあれ痛みがなくなったことは、わしにとって命拾いじゃわい。これで甘酒でなく酒が飲めるというもの」
「あ、しばらく酒はダメだぞ。俺の治療を受けたとはいえ、まだ完治してないのだからな」
「なにぃ!?」
桔梗……あなたってば、本当にお酒のことしか考えていないの?
「……それだけ元気ならば、感染症の心配もなさそうだ。華佗にかかれば死人も生き返るんじゃないか?」
「死んだ直後で五体満足なら可能だぞ?」
「マジかよ!?」
し、死人すら……ですか?
お、思っていた以上にすごい方だったのですね、華佗さん。
「死者蘇生って、どんだけメタな世界なんだ。一刀……お前は一体どういう世界創造を」
北郷さんが頭を抱えています。
よくわかりませんけど、なにかショックを受けているようです。
「ま、まあいい。とにかく助かった……そういえば厳顔さん」
「何じゃ?」
「確か太守がどうとか言ってませ……」
「そうじゃ!! 太守が攫われたのじゃった!」
あ……そういえば、最初ここに来たときに深刻そうな内容でしたけど。
桔梗の怪我のことですっかり忘れていましたわ。
「ばか者! あれから一日経ってしまったではないか! お前が儂を治療なんぞするからじゃ!」
「ひでえ!? そ、そりゃないでしょう!?」
桔梗が北郷さんの胸倉を掴んで騒いでいます。
……確かに理不尽な話ですわね。
思わず苦笑してしまいますけど。
「なんだか大変な話だな……とりあえずどういうことか話してみてくれるか?」
華佗さんが落ち着いた様子で椅子に座りました。
その様子に、桔梗も北郷さんを放して咳払いを一つ。
「そうじゃ……あれは昨日の夕方じゃった。儂は――」
彼女の話によると、巴郡へ引き上げる直前に私との約束を知らされた桔梗。
その約束のためにこの宿に向かう途中、江賊の集団に連れ去れる太守の姿を偶然目撃したとのこと。
部下はすでに陣払いをさせており
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