崑崙の章
第4話 「治るって……医師いらねぇじゃん、これ」
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ようだわ。
「よかった……桔梗」
「う、うむ。助かった……そっちの小僧も痛みで憎々しかったが、一応礼は言っといてやる」
「へいへい……」
桔梗がジト目で北郷さんを見る。
すると針を片付けていた華佗さんが、振り返った。
「勘違いをしないでくれ。北郷の処置は完全だった。五斗米道だからこその瞬時回復術だ。血が減ることでの失血死を防ぐ縫合術。体力の回復と痛みの緩和での甘酒の処置。食事においても血液の増進も考えられていた。普通の医師なら貴方は死んでいるぞ」
「なに……まことか?」
「ああ。俺だって彼が連れてきてくれなければここにはいなかった。彼がやった応急処置は、おそらくそこらの医師じゃ出来ない高度なものだ。十中八九、俺が来る前に死んでいただろう」
桔梗の言葉に、華佗が真剣な表情で頷く。
北郷さんはバツが悪そうに頬を掻いた。
その様子に……わたくしが、北郷さんの前で膝をつく。
「黄忠さん!?」
「北郷さん……先日は大変失礼しました。改めて御礼を申し上げます。我が友、桔梗の命を救っていただき、ありがとうございました……」
「い、いえ! 俺がやったことはあくまで通常の治療ですし……華佗が最初からいれば、俺なんかがでしゃばることはなかったことです」
「ですが、彼はいなかった。その間の治療、そして彼を連れて来てくれた事。感謝の念に堪えません。このお礼は必ず……」
わたくしは、彼に平伏する。
我が最大の友人である桔梗の命を救ってくれた。
この人は……生涯を以って報いる必要がある。
「いや、その……あ。じゃ、じゃあ先日の失礼を帳消しにするということで、相殺しましょうよ」
「は?」
思わず顔をあげる。
あまりの軽い報酬に、不覚にも声を上げてしまった。
「失礼って、お前なにをしたんだ?」
「い、いやあ。ちょっと出過ぎたことをしてナンパ野郎みたいにな」
「ナンパ?」
華佗さんの問いに、北郷さんがしどろもどろで答える。
人の命を救った代償を、そんなことで帳消しにするという。
……ぷっ
「ぷっ……くすくすくす……」
「おや?」
「フフッ……クク……ふふっ……あはっ……くふふふ……」
思わず笑ってしまった。
わたくしには珍しく、声にだして。
こんなに笑ったのは……いつ以来だろう。
あの人が亡くなってから……こんなに心から笑えたことがあっただろうか?
「……貴方様は、素晴らしい方ですわね」
「いや……普通、だよ、ね?」
「俺に聞くな」
北郷さんが戸惑いつつ、華佗さんに振る。
くすくす……テレている姿が、かわいい。
「ありがとうございます。でもいつか……このお礼は、させていただきますわ」
「えっと……じゃあ、
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