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駄目親父としっかり娘の珍道中
第8話 どんな些細な事でも懲り過ぎると案外大変
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ん。お魚下さぁい」
「あいよぅ、何処が良いんだい?」

 お互いに声を掛け合いなのはと店主が目を合わせる。
 その直後、なのはと店主意外の動きがスローモーションになる錯覚を感じた。見れば、なのはと店主が互いに睨み合っているではないか。
 正しく一触即発な雰囲気と言えた。これから戦いが始まるのではないか。
 場の空気に緊迫したフェイトは思わず固唾を呑んだ。そして、その直後として戦いは勃発した。

「これとこれとこれ下さい!」
(なっ、それは今が旬の魚から切り取った部位! それを瞬時に見抜くとは。この娘、侮れん)

 いきなり先手を切ったなのはに戦慄を覚える店主。だが、店主とてこの店を持つ者として負ける訳にはいかない。

「そうかい、今ならセットでこいつもつけるがどうだい?」
「それ旬じゃないしその部位は癖が強いから要らない。どうせならこっちが良いな」
(くっ、この娘どれだけの知識を持っていると言うんだ。次々と良い部位を狙って持って行きやがる。このままじゃ商売上がったりだ! 負けられねぇ。この道ン十年の意地に掛けても絶対引く訳にゃいかねぇ!)

 その後もなのはと店主の激しい攻防戦は展開していた。店主が守りに徹すれば、すかさずなのはが攻めに入り、かと言って店主が攻めに転ずればすかさずなのははブロックを行う。
 店主は押され気味であった。だが、店主にも意地がある。此処で退く訳にはいかない。
 されど、なのはとて譲る気はない。格安で良い素材を手に入れる絶好の機会を逃す事をなのはがする筈がないのだ。
 9年間と言う短いようで長い間、なのはは駄目人間の集いとも言える万事屋で家事、炊事を担当してきた。その過程でなのははどうやって安く、それでいて美味しい食事を提供出来るか幼いながらも試行錯誤し続けていたのだ。
 彼女曰く料理は材料集めから既に戦いは始まっていると言えるのだ。
 何時までも続くかと思われた戦いは遂に終焉を迎えた。戦いの後には大量の素材を手に入れてホクホクななのはに対し、燃え尽き真っ白になってしまった店主が居ると言う何ともシュールな光景であった。

「えっと、大丈夫なの? あのお店の人」
「大丈夫だよ。ちゃんとお金も払って来たしね」

 一応なのははフェイトから事前にこの世界のお金を貰っている。と言うのも、この世界では江戸のお金は使い物にならず、せいぜい鼻紙程度にしかならないのである。
 幸いフェイトはお金には困ってなかったのでその辺を工面して貰ったのだ。
 しかし、フェイトは単にスーパーで買い物をするのだとてっきり思い込んでいたのでまさか市場まで行くとは思いもしてなかったようである。

「さ、大体買い物も終わったし帰ろう。帰って朝御飯食べないとね」
「た、逞しいね。なのはって……」

 あれだ
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