第5章 契約
第67話 疫鬼
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もっとも、少女の寝顔を見つめる事など、紳士としては恥ずべき行為のような気もしますが。
微かに上下する胸の状況から、呼吸は正常。そして、眠り続ける彼女から感じるのは安らぎの雰囲気。少なくとも、悪しき夢の類に囚われている雰囲気では有りません。
「病の治療は終了して居ますが、何故か未だ目を覚ます事が有りません」
俺に続いて部屋に一歩入って来た水の精霊が部屋の入り口で留まったまま、俺の背中に対してそう答えた。
但し、現在のタバサが示して居る眠りが、病に因ってもたらされる眠りなのか、それとも、それ以外の理由に因る眠りなのかは判らないのですが。
何故ならば、彼女は夜の属性を持つ存在。陽光溢れる昼間の行動は、矢張り、身体に多少の負担が掛かるのも事実。
まして、この一カ月の間は、母親の看病やその母親の精神を回復させる為に奮闘していたはずです。
俺が傍に居なかったから……。
妙に意固地なトコロが有って、負けず嫌い。そんな部分が、今回は少し悪い方向に作用した可能性も少なくは有りませんから。
「それで、タバサの母親は……。最終的に、精神の状態は回復させられたのか?」
先ずはその部分の確認から行うべきですか。
そう考えながら、振り返って水の精霊に対して問い掛ける俺。
まして、今朝方死亡したのなら、未だタバサの母親の死を知って居るのはごく少数のはず。そして、もし、母親が死すべき運命にない状況。天命を捻じ曲げて、何らかの呪詛に因って死亡させられた状況ならば、彼女の魂を呼び戻す事は可能ですから。
肉体さえ、無事な状態で存在して居たのなら。
「その事なのですが……」
かなり、言い淀むような雰囲気の水の精霊。その視線は一度、床に落とされ、其処からタバサに向かい、そうして最後に俺の元に戻る。
この視線の動きは、事実を告げるまでの逡巡を意味している。つまり、これから告げる事実は、かなりの陰の気に包まれた事実で有る可能性が高いと言う事。
【大公夫人は、確かに正常な状態に回復なさいました】
其処から先を、実際の言葉ではなく、【念話】で続けて来る水の精霊。
後に続く僅かな空白。これも、感じるのは逡巡。これは、余程、厄介な内容の話に成ると言う事。
そうして、
【タバサには双子の妹が居ます】
……と、短く告げて来た。
タバサに双子の妹?
水の精霊の【言葉】に対して、オウム返しにそう考えた後に、少しの空白。それは、あまりにも唐突な内容で有った為に、内容を理解出来なかったから。
それに、そもそも彼女に妹が居たのなら、俺に対してはとっくの昔に紹介されていたとしても不思議ではないと思うのですが……。
タバサが俺の事を疑って、自らの妹を紹介しなかったとは考
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