第5章 契約
第67話 疫鬼
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ますから。
形代を乗せた船たちが光輝の中に消えて行く。
その度に発生する『怨』とは違う何かの閃き。
そう。いくら操られて居たとしても。いくら自らが疫病で死した存在だとしても、全ての存在が深い恨みによって凝り固まっていた訳では有りません。
故に哭いていましたから。すべての疫鬼たちが……。
自らの境遇を恨み、自らを操る存在を恨み、無力な自分自身を恨む。
そして、今、その呪縛から解き放たれた疫鬼たち。いや、解き放たれたのですから、既に彼らは疫鬼では有りません。
御霊たちが太陽の生まれる穴。つまり、境界の向こう側へと消えて行く度に、彼らの残す思いが光と成って残されて行くのですから……。
最後の一艘が、太陽の穴へと消え去るまで見届ける俺と湖の乙女。
そして、この最後の船が一筋の光と成って消えた時が、次の戦いの始まり。
今回の事件は、俺の存在その物の否定に繋がる事件だと思いますから。
何故ならば、無理矢理、死者の魂を操るような真似を行い、
命運が尽きていない人々を、現実を曲げるような真似をして新たな疫鬼として使役する。
これを式神使いの俺と、仙人の俺が許す訳には行かない。
俺は、湖の乙女を自らの視線の中心に据えた。
彼女が微かに首肯く。
その瞬間、蒼白い輝きを放ち続けていた向こう側への道が、輝きを失って行った。
☆★☆★☆
以前に一度だけ訪れた事の有る屋敷。
流石はガリア王国の王位継承権一位を示す家名。オルレアンの名を継ぐ者の屋敷で有っただけに、其処は城と言うよりは、白亜の豪邸と言う雰囲気と言った方が伝わり易い形の建物で有った。
二十世紀末から二十一世紀初めの日本の教育を受けていた俺の目から見ると。
そう。左右対称に広がる三階層から成る豪邸は、一階部分は二階部分からせり出したバルコニーを支える為に古代ギリシャの神殿……。まるで、パルテノン神殿のような柱が並ぶ荘重な、と表現される造りとなって居り、
二階部分は、正面中央部のせり出した屋根。二体のガーゴイルが並ぶ屋根を支える為に設けられた一階部分の柱とは違う形の、これもまたギリシャの神殿を支える柱にも似た柱が目に着く造りとなって居る。
そして、最後の三階部分は、この屋敷の主の髪と同じ色をした屋根と、そして、その丁度中心に存在する紋章。蒼き盾の中に白きレイブルと三本のアヤメを象った紋章を配した造りと成って居た。
それは……そう、ガリアの王権を示すアヤメを紋章の中に示す事こそ、ガリア王族の証。
建物全体に窓が多く、陽光を取り込み易い形となって居り、その辺りも中世ヨーロッパの尖塔を持つ造りの堅固な城をイメージさせるトリステイン魔法学院などとは違う、ガリアの建築物だと言う事が良
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