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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第67話 疫鬼
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日本の神職の衣装。

 片や、湖の乙女は、
 白衣に紅の袴。
 こちらの方も巫女そのものの姿。

 ゆっくりと音階を取りながら、地を蹴り、袖を翻す。

 俺が大地を軽やかに蹴る度に。
 彼女が右手の扇を大きく動かす。

 俺の扇が翻った瞬間、彼女が危なげない裾捌きで紅の袴を翻した。
 そう、その動きは正に比翼連理と言うに相応しい動き。

 その動きに合わせるかのように小さき精霊たちが活性化し、俺と、彼女(湖の乙女)の身体から。そして、二人が接している大地から。更には、傍らを流れ行く河から、淡い燐光にも似た光輝が立ち昇る。

 そう。静かに流れ行く川面に精霊たちが舞い踊り、その活性化した小さき精霊たちに因り、蒼い光の道が造り上げられて行く……。
 その蒼い光に乗って、下流の一点へと流れて行く船団。
 ゆっくりと着実に、大海(わだつみ)へと進み行くのだ。

 海の向こうに存在すると言う理想郷。観音菩薩が住むと言われている補陀落(ふだらく)の地を目指して……。

 しかし……。

 確かに、通常の穢れや恨みを流す場合ならばそれでも良い。
 但し、今回の場合は、おそらく、それだけでは足りません。



 刹那、俺と湖の乙女の動きが重なりを見せ、霊気が完全に同期を果たした。
 瞬転。世界が変わる。

 海から吹く風はそのままに。蒼穹から降り注ぐ秋の陽光も変わらず。
 しかし、何かが違う。

 それは……。
 それは、形代を乗せた船団が流れ行く先。一際、強い光を放つ場所。まるで沖縄の伝説に登場する太陽が生まれる穴にも似た光輝を発する場所が、其処に顕われて居たのだ。

 ゆっくりと、太陽が生まれる穴。いや、祖霊神が誕生すると言われる場所へと進む船団。
 そう。今回の御霊(みたま)送りは、此方の世界と、彼方の世界との境界線をこじ開け、霊たちを簡単に疫鬼として使役出来ないようにする為の処置。
 この地域は、ガリアの古い言葉で地の果てと言う意味を持って居る地域。そして同時に、河と海の境界線でも有る。
 つまり、地果て、海始まる地で有り、河と海の境界線と言う意味でも有る。

 こう言う場所でなら、境界を開き易い。

 相手がどのような存在で有るか判りませんが、これで、昨夜、捕らえた疫鬼たちが、再び、彼らの縁者を苦しめる可能性は低くなるはずです。
 流石に、同じ人間に対して、同じ疫鬼が三度祓っても、翌日には同じように憑いて居る、……と言う事を繰り返されたら、今回の騒動が、ただの呪詛ではない事が判ろうと言う物です。
 そして、もし、この方法でも尚、再び同じ連中が疫鬼として使役されていたのなら、それは、疫病神で有り、冥府の神でも有る属性を持つ、強力な神が顕現しようとしている兆候でも有り
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