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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第67話 疫鬼
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るで老人の如き皺が浮かぶと言う。

 男が。女が。老人が。子供が。

 淡い光の線に導かれながら、踊るように、舞うように進む。
 ひたひた、ひたひた、と。

 泣くように。鳴くように。
 ひゅりぃぃりぃいいぃぃぃ――――

 いや、このような場面には、もっと相応しい表現が有ったはずですか。
 哭く、と言う言葉が……。

 そして――――
 ざわざわ……。ざわざわ……。

 何処かから、あそこから、そして、その虚ろな表情を浮かべた疫鬼どもから、声が。声が。声が聞こえて来る。
 怨念に染まり、生への執着が炎を上げて燃え盛るような、向こう側から届いて来る声が。
 これは忘れ去られた者が持つに至る悲嘆か。それとも、悲愁か。
 それとも、悲鳴か……。



 そう。ふたり(湖の乙女と金の魔女)が。そして、俺がその時に感じたのは慄然。これだけの疫鬼を俺たちが施した形代程度で誤魔化す事が出来るのか。
 怨嗟の籠った叫びに魂まで穢され、風に乗って漂う死臭に、酸っぱい物が喉元までこみ上げて来る。

 初めからこれだけの疫鬼が街に溢れかえって居たとは思えない。一日、時間が進む毎に疫鬼の数が増えて行ったのは想像に難く有りません。
 ましてこの街は、ごく最近に多くの住人を失っています。

 つまり、それだけ、死に近い街だと言う事でも有りますから。現在のブレスト、と言う街に関しては……。



 踊るように、舞うように。ゆっくりと跳ねるような通常の人間には不可能なスローモーションの世界の中を、重力の法則を無視した動きで石畳の道を何処かに向かって進み行く疫鬼の群れ。
 その不気味な行進に重なり、石造りの堅固な家々の間を、哭くような怨念の叫びが反響して行く。

 ひゅりぃぃいいりぃぃぃ――――

 そして、次の瞬間。俺たちが見ている目の前で、それぞれの家へと消えて行く疫鬼たち。
 あそこの商家に……。
 ここの長屋に……。

 家の大小。立派な門構えの家。粗末な四阿(あずまや)に関係なく。

 謳いながら、哭きながら……。
 踊るように、跳ねるように……。

「シノブさん」

 その時に、喜びに近い声を上げるモンモランシー。
 そう。疫鬼たちが入って行ったのは、俺たちが仕掛けた形代(かたしろ)……。呪いを患者たちの代わりに受ける紙に因り作られた人形が待つ、それぞれの家。

 刹那。家々に配置された形代たちが呪詛を受け、黒く穢されて行くのを感じる。
 しかし、其処まで。その形代から先に細く伸びる、本来のその家の住人たちの元に進み行く疫鬼たちの姿は、今のトコロ確認は出来ません。

「この程度の身代わりでも一時しのぎに成るのは確認出来たな」

 これで、明日からは形代を作製す
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