第5章 契約
第67話 疫鬼
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考えられません。
通常の地球世界の十九世紀程度の医療が、俺の居るブレストの街では再現可能です。更に、軍港で有ると言う事は、ここは他の街と比べて魔法使いの比率も高い。
更に、医療品や食料などの備蓄も有ります。
つまり、疫鬼を祓えば、患者をかなりの確率で生存させる事が可能だと言う事です。
但し、それ以上の事。……異界化の核に見当が付かない上に、このブレストの地の近辺で邪神の召喚が行われているのでない限り、現状では対症療法に終始するしか方法がないのも事実。
まして、長引けば長引く程、患者の数は雪だるま式に増えて行き、更に、早い段階で罹患した人たちの体力が失われる事に因り、病に対する抵抗力が下がる事と成ります。
この状況下で、現状を打開するのに必要な材料は……。
「勝負は今晩。俺の策が上手く行けば、明日からは自由に動けるようになる」
俺は短くそう語り、そして、窓から見えるブレストの街へと視線を移す。
其処には、秋特有の高い大空と、海から吹く風が存在しているだけの、何時ものブレストの街が存在しているだけでした。
☆★☆★☆
ほんの少しだけずれた二人の女神が中天で地上を照らす時間帯。
刹那、風が鳴った。
秋に相応しくない、何故か、妙な生暖かさを感じる風。
それは、何故か彼方から響く笛の音の様であり、そして矢張り、笛の音では無かった。
それは、そう……。
「幽霊が嘯く」
いや、それは鬼嘯。鬼が顕われる際に聞こえて来ると言われる風の音。
俺の傍らで紫の少女と、そして、金の魔女が少し緊張した雰囲気を発した。
いや、それは間違い。これは、緊張と言うレベルの物ではない。
大地から。風の中から。波の間から。
有りとあらゆる場所からぼぅと浮かび上がる顔。
ゆっくりと。まるで大地に倒れ伏した状態から、再び立ち上がるかのような雰囲気で……。
そして、その何モノか達が纏う淡い燐光。
ひゅりぃぃりぃりぃぃいいぃぃぃ――――
ひたひた……。ひたひた……と、何処かから。まるで深い地の底から聞こえて来るような足音。
二人の女神に照らされ、更に、自らが淡い燐光を発しながらも、何故か暗い印象しか受けないソイツら。
そう。若い男性が痘痕に覆われた身体で何処かへ。薄い光の線に従って何処かへ向かって、身体中から膿を垂れ流しながら歩んで行く。
これは間違いなく、疱瘡神。疱瘡で死亡した人間が鬼と成った存在。
身体中を皺で覆われた人間が、妙によたよたした足取りながら、こちらも何処かに向かって歩み行く。
そうだ。コレラに因って死亡した人間は、極度の脱水症状に因り、皮膚が乾燥し、ま
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