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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第67話 疫鬼
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断たない限り、この状況(異界化現象)を止める手段は、現在の俺には存在しない、と言う事でも有ります。



「それで、シノブさんでも、現在の状況をどうにかする手段は持ってはいないと言う事なのですか?」

 三大疫病の爆発的な感染拡大を受けて、急遽、応援に来て貰ったケルトの魔女モンモランシーが、そう問い掛けて来た。
 その姿は、普段通りの黒のとんがり帽子に黒のマント。
 トリステインの魔法学院の制服やタイピンに魔的な意味……。ケルトの魔法的な意味が有ると思えませんから、彼女のその姿は、地球世界のケルトの魔女が円錐を模してとんがり帽子とマントを着けているのと同じ理由だと思いますね。

「疫鬼が縁の糸を辿って来て居る以上、縁を完全に断ち切る事は、俺には難しいな」

 かなり難しい顔をしているのは間違いない、俺がそう答えた。
 まして、そんな事が出来るのは運命神。俺は、そいつらの決めた流れとやらに抗う事は出来ますが、流石に万能の存在と言う訳では有りませんから。

 そう。縁が繋がっていると言う事は、それぞれの患者に纏わりついている疫鬼の正体は、その疫鬼が広めている流行り病で死亡した、患者の縁者たち。
 簡単に考えるのならば、先祖供養を怠ったが故に発生した霊障と考える事も可能なのですが……。

 ただ、それでも同時にこれだけの数の人間が、先祖供養を怠った為に霊障を受けると言う事は有り得ないはずですから。

 尚、現在は昼食後の小休止の時間。場所は臨時の疫病患者の収容施設と成った元ガリア両用艦隊司令部の置かれていた建物の部屋。
 それで、イザベラからの連絡に因ると、この異常な事態……。急に末期状態の疫病の症状を発する患者が大量に現れている、などと言う異常な事態が起きて居るのは、流石にこのブレストだけらしいのですが、しかし、ガリア国内では、それぞれ単体の疫病が発生しつつある地域は存在しているらしいので……。

 もっとも、地球世界でもペストの大流行はヨーロッパを何度も襲って居ますし、コレラはアジアではコレラ菌が発見されるまで、何年か置きに大規模な発生が確認され多くの死者を出したと歴史書では伝えられています。
 そして、この辺りの経緯は、当然、疱瘡にしても同じ。

 つまり、このハルケギニアで現在、疫病が流行の兆しを見せているのが、通常のウィルスや感染経路で広がって居る伝染病なのか、それとも、ここブレストで蔓延している疫鬼が広めつつ有る呪いとしての伝染病なのかを確かめる術は有りません、と言う事です。

「今のトコロ、集まって来る疫鬼を祓って、患者の身体に蓄積されているウィルスを駆除する。
 後は、体力を回復させてやるぐらいしか方法がないな」

 実際、ここに俺が居る限り、これから先に疫病に因る大量の死者が出る事は
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