百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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、待ってりょう!えと、また明日ね!」
「えぇ、またね」
「頑張ってね〜」
杏奈と、ブンブン手を振っている美雨に軽く手を振ってから、美幸は涼人を追い掛ける。その背中を見ながら、残った二人は呟くように話す。
「……美雨、良いのよね?」
「あははは。アンは心配症だね〜、ちゃんとキリの付いた事で何時までもめそめそしないよ?」
「……そ」
そう言って、杏奈と美雨は涼人達とは逆方向に歩いていく。美雨の真意は、正直な所杏奈には図れなかったが、深く探るような事では無い気がして、それ以上の追求は止めた。
――――
「高速乗るの?」
「おう。中央道使わねえと倍くれぇ掛かるからなぁ……」
言いながら涼人はETCを通り抜けて、スピードを上げていく。
何だかんだで涼人の車には既に何度も乗って居るが、未だに狭い車内で自分が助手席、涼人が運転席で二人きりとなると、少々鼓動が早まってしまう。
明日奈などはしょっちゅう和人の背中にくっ付いてバイクで二人乗りをしているが、同じ事をしろと言われたら流石に自分にはハードルが高いだろうなぁ、と勝手に思って居る美幸だった。
『どこに行くんだろ……?』
しかし……涼人と出掛けるのに川越の桐ヶ谷家に行く以外だと、都内から出るのは結構珍しい。
先程それとなく聞いたら「こういうのは着くまで秘密が定番だろ」と言われてしまった。
都内から西の方に向けて伸びる中央自動車道を使って行くとなると、山の方だろうか?そんな事を考えて居る内に……
『あ、れ……?』
車の揺れのせいか、急激に眠気がやってきて、意識が落ちて行くのが分かった。
昨晩はいきなりリョウが誘いをかけたせいで、碌に眠れなかったし、授業中もずっとボーっとしてたからかな……
等と考えているうちに、美幸の意識は下へ、下へと落ちて行った。
――――
「ん?美幸……っはは。寝たか……」
真っ直ぐに続く中央道を走りながらチラリと隣を見ると、すぅすぅと寝息を立てている少女が目に入り、涼人は苦笑した。
車内は静かに成り、聞こえてくるのは音量を絞ったラジオと音と、美幸の静かな寝息の音だけだ。
「……もう、二年か……」
サチの同級生だったケイタ達が死んだ後、サチとリョウがキリトを立ち直らせてから……もうすぐ、二年になろうとしていた。
あの日、キリトの心を暗闇から引きずり上げたのはサチの心と、優しさだった。しかし、彼女の心がキリトの心に届くほどの光を取り戻すまでの道のりは、決して楽な物だったとは言えない。
あのケイタ達が死んでから後の一月と半分くらいの間、サチの心は乱れ、恐怖と、悲しみの暗闇に囚われ続けていた。
微笑みは今のような温かい物ではなく、死人が浮かべたような虚ろな物で
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