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SAO─戦士達の物語
百二十二話 The Red-Nosed Reindeer─赤鼻のトナカイ─
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線を自分に向ける母親から目を反らしつつ、壷井 遼太郎ことクラインは、ディナーをかっ込むのだった。

────

「きれいだねぇ……」
「あぁ」
『すごいです〜』
所変わって都内某所。
キラキラと光る光の瞬きの中に、二人の人影……いや。正確には、一人の少年と、二人の少女がベンチに腰掛けていた。
目の前を歩き去る何組もの自分達と同じ関係の男女をしり目に二人は少し冷たい空気の中で、互いを温めるように近くに座り、間では結ばれた手が相手の手の暖かさを伝えていた。

その手の暖かさが、明日奈は好きだった。
唯の体温としての熱しか持たない其れは、どう言う訳か温度以上の物を、自分に伝えてくれる事が有る事を、彼女はSAOに居た時代から知っている。
実際今も、彼女は隣に居る少年の心の穏やかさが何となく伝わって来ている。柔らかく笑って彼女は口を開く。

「でもびっくりしたよー。キリト君普段こういうのに鈍いし」
「うっ……」
少しからかい調子に言ってやると、和人は一瞬言葉に詰まったような顔をして、頬を掻きながら言う。

「いや、まぁ……其れは自覚あるんですよ……でもほら、流石に俺も、クリスマス位は知っていると言うか……寧ろこれくらいじゃないとちゃんと分かってないと言うか……」
言いながらやりずらそうに頬を掻き続ける少年にアスナは柔らかく笑う。

「うん。分かってるよ。ありがとう、大切にしてくれて」
「あ、あぁ……」
『パパの体温、順調に上昇中です。ママ』
「なっ!?ユイ、そう言うの良いってば!」
「ふふふ……ユイちゃんが言わなくても分かるよ〜?顔真っ赤だもん、キリト君」
「うぐぅ……」
娘と妻からの挟み撃ちについに項垂れて、和人は「叶わないよなぁ……」等と言葉を漏らす。
少しその顔を眺めて、再び光輝く夜の街へと視線を戻す。
隣で、呟くように、彼が言った。

「……綺麗だな」
「……うん」
『星屑みたいです……』
三人の声が、夜の街に溶けて行く。
ふと思いついたように、アスナは言った。

「……ね、キリト君」
「うん?」
「……来年も、三人で一緒にこようね?」
「あぁ……そうだな」
少女は少年の肩に頭を乗せて、間に二人の娘を幻想の中で抱きながら、その場所にある幸せを慈しみ続けていた。

────

「やっぱうめーよな。お前の歌」
「そ、そう……?」
隣を歩くサチに言いながら、涼人は苦笑して言った。

「あぁ。つか普通にあの拍手が証明だろ」
コンサートは、大成功でおわった。サチの歌声が、予想以上に観客の心に響いたらしく、結局彼女は知っている曲を三曲歌い、アンコールまで叫ばれた程だ。

「で、でもやっぱり恥ずかしいね……ああいうの」
「そう言う割に昔から舞台上に上がるとつえーよな。
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