第3話「仕事―表」
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「え〜、個人的に何かあるなら授業後に来るように……」
とだけ言ってそそくさと教室を出て行った。彼にしては珍しく頬を赤くさせていたことに気付いた人間は幸い誰もいなかった。
「逃げた!」
「逃げた逃げた〜!」
騒ぎ立てる大半の女性徒とは裏腹に
「結局、拙者の質問に答えていないでござる」
「ウチも質問したかったのに〜」
と最初から手を上げていた数人は少しだけ頬を膨らませていたとか、いなかったとか。
寮生達が寝静まろうと準備を始めている時間。例に漏れず彼女達も寝るための準備を始めていた。
ネギは寝るためのソファに横たわり、タケルのことを考える。
「……なんだか、格好良かったな」
小さく呟いたつもりだったが、同室の住人、アスナと木乃香がそれに反応した。
「タケル先輩のこと?」
「あ、はい。今日は少ししかお話できなかったんですけど、厳しくて温かい人って感じがしました。もし僕にお兄さんがいたらああいう人がいいです」
「あ、ちょっとわかるかも」
「確かに、ね」
朝の教室で自己紹介が終わった後、一旦逃げ出した彼だったが、放課後のHRで再度姿を現して、ある程度の覚悟を決めていたのか、再び殺到する質問―当然下らない質問もいくつもあったが―。その全てに一々バカ丁寧に答えていた。
その姿に好感を覚えるものも少なくなかったという。
「ネギなんかよりはずっと頼りになる雰囲気は出てたもんねー」
と少し意地悪に笑うアスナに、ネギは少しムッとしながらも素直に「はい」と答えて
「僕も頑張ります」
と無駄に燃えていた。
こうしてとにかく、彼は女性徒たちに受け入れられた。彼の初教師一日目はこうやって過ぎて行ったのだった。
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