第3話「仕事―表」
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だけむず痒い気分になった。
とりあえず共通しているのは全員がワクワクとした顔をしていることだ。何を言うのか、楽しみで仕方がないのだろう。
2−Aのクラス、合計31名。明石祐奈と最初に視線を合わせ、それから次へ次へと移して行く。最後まで終わったとき、彼はため息をついた。
「今日から君たちの副担任を務めることになった、大和 猛だ。宜しく」
無表情で、淡々と。だが、凛とした声だ。
「質問があるなら受け付ける。ないなら俺は後ろに下がってネギ先生に授業をはじめてもらう」
といっても余りの簡潔な自己紹介に、質問すら思い浮かばないようで、誰も手を上げない。タケルはこんなものだろう、と思いつつも教卓の場をネギに譲ろうとした時、「はい」と数人が手を上げていた。
「……ん?」
タケルはどうやら質問者がいることが予想外だったらしく、面食らったような、そんな表情を見せたが、すぐに無表情に戻り手を上げた人物の顔を見渡した。手を上げている人物は全員、彼と一度は接触した人物なのだが、彼は気付いていない。
「じゃあ、神楽坂さん」
アスナがさっと立ち上がった。元気良く、だが、少し困ったように質問する。
「あの、何て呼べばいいですか?」
「……なるほど、いい質問だ」
――そうか?
誰もが首をかしげたところで、タケルが答えた。
「先生でも先輩でも。苗字でも名前のほうでも、好きに呼んでくれて構わない。だが、一応は君たちの先生としてここにいる以上、ある程度の丁寧語は使ってもらいたい」
これでいいか? と無言で尋ねるタケルに、アスナが「はい」と頷き座る。
もって回った言い方をしているが、要は敬語を使っていれば問題ないということなのだろう。わざわざ分かりにくい、変な言い回しをする目の前の彼に、徐々に生徒達の興味は集まり始めた。
「じゃあ、次は長瀬さん」
「タケル殿は先程なぜ、壁を爆走していたでござるか?」
「……うぐ」
――痛いところを付かれた。
明らかに表情を曇らせ、口ごもったタケルに女性徒たちが騒ぎ始める。
「あれ、あの人だったの?」
「あ、私も見た! 格好が違うから気付かなかった」
「あれはすごかったなぁ」
などと口々にはやし立てる生徒達に、タケルはもはや格好の的となった。
「はいはい私も質問!」
「うちも」
「私も私も〜」
「僕も」
「む、ぐ……ネギ」
余りの勢いに、タケルはついに素となって担任の名を呼ぶ。
「はい、なんですか?」
昨日の彼女達の勢いを知っている彼からしてみれば、今のそれに慌てるほどのものではないのかもしれない。
「俺……ムリ」
それだけ言ってネギを無理やり教卓にたたせて
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