第3話「仕事―表」
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とは思えないほどに出来た性格に見える。
タケルが怪訝な顔をしていることに気付いたのか、アスナは少々苦笑いを浮かべて舌を出して、小さな声で言う。
「……私、ガキが好きじゃないんです」
「……なるほど」
どうも単純な理由だったようで、女子中学生らしい答えにホッと微笑む。アスナもそれにつられて微笑んだのだが、すぐにハッとした顔で腕時計に目を配った。
「あ、いけない。バイトが間に合わなくなっちゃう! ……それじゃ、スイマセン先生! また後で!!」
「……ああ、また」
軽く手を振り、その場ですれ違う。駆け足で去っていく彼女の背中は意外に早い。
――陸上部にでも所属してるのか?
「……俺も走ろう」
冷えてしまった体を温めるためにのんびりと走り出す。そして5分くらいたって「っ!?」何かに気付き、立ち止まった。
無言のまま、首をめぐらせたっぷりと間合いをおいて一言。
「――ここどこだ?」
首をめぐらせるが誰もいない。
「……」
誰もいない。
「…………」
やっぱり、いない。
当然だが誰も答えてくれそうになかった。
アスナは急いで新聞を配りながらも先程すれ違った人物、確かタケルという名の先輩――いや今日からは先生だが――のことを思い出していた。
――昨日はネギのことで一杯一杯だったからほとんど印象に残ってなかったけど……うん、確かに。
先程たまたま会った時に少しだけ会話を交わしたが、昨日に木乃香が言っていた言葉を思い出す。
『何やネギ君とは対照的な感じの人やったな〜』
そのときは適当に答えたが、さっきの会話で木乃香の言いたかったことが今ではよくわかる。
年上で、ネギとは違って頼りになる感じの雰囲気がむんむんと出ていた。ただ、ネギのように人を惹きつけるような、そんな華やかさはない。
地味で、無口で、無愛想だが、頼りになる。そんな感じだろうか。
顔は人によっては印象が変わるだろう。まぁ、地味という印象は免れないかもしれないが、それを加味しても悪くはない、だろう。決して良いともいえないかもしれないが。
――あんなお兄ちゃん……ありかな?
とまぁ、中学生らしい考えが渦巻きつつも心の片隅では
――またウチの一部の人たちが騒ぎそうね、こりゃ。
微妙に頭を抱えたくなったアスナだった。
「まずい、まずいぞ」
迷子になってから既に2時間が経とうとしていた。幸い腕時計を持っていたので時間はわかる。現在午前7時49分。あと1時間もすれば学校が始まってしまう。
にも関わらず、見覚えのある経路に辿り着かない。誰かに道を尋ねようにも場所が悪いのか、人っ
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