アインクラッド 前編
視えざる《風》を捉えろ!
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そうなれば、消滅時特有の青い光を見逃すはずが……待てよ? 青い光、青い光……青い……光……)
「あの時か……!」
今からたった数十秒前、天地が逆転した視界で瞬いていた青い光が、マサキが以前見た消滅時ライトエフェクトと脳裏で一致した。おそらく先ほどの攻撃が腰のポーチに直撃し、内部のビンや結晶が破損。吹っ飛ばされた際にポーチから落ちたのだろう。
「ハァ……そういうことか……」
「どういうことでもいいから早く結晶を出せよ! じゃないと、二撃目が来ちまう!」
「まあ、待て」
合点がいったマサキは、一度大きく首を横に振りながら溜息をつくと、焦るトウマに匙を投げたような態度で言った。
「結論から言おう、転移結晶はない。どうやらさっきの攻撃を喰らった際に砕けたらしい」
「なっ……! おい、ウソだろ!? そんなのって、アリなのかよ……!?」
「俺に訊かれても困るがな。この仮想現実を操るカーディナル様はアリだと判断したんだろう」
「そ……んな……それじゃ、一体どうやってここから逃げ出せばいいんだ!?」
「どうやっても何も、逃げようがないだろう。転移結晶はない、武器もない、ポーションだって残りはたった数個。……この状況で逃げ切るなんて、GMでもない限り不可能だ」
「…………」
他人事のように淡々と語るマサキの一言一言が、例外なくトウマの顔色を青白く変化させていく。そして、マサキが「不可能」の一言を口に出したとき、遂にトウマは俯いた状態で押し黙ってしまった。短い前髪で隠された表情は見えないが、何かを迷っているようにも見える。
「……まあ、そういうことだ。お前一人で帰ってくれ。俺はここでゲームオーバーだが……ま、せいぜい元気にやれ」
「そんな……マサキはそれでいいのかよ!?」
まるで喫茶店でオーダーでも待っているかのように投げ出した足を組み、両手も頭の後ろで組んだマサキに、トウマが少し上ずった声で問うた。相変わらず顔は見えないが、その声には葛藤が色濃く写っている。
「いいも何も、それしかないんだから仕方ない。今この状況で、俺に選択権はないんだからな。……ほら、さっさと転移しないと、本当に二撃目が……「――だったら」ん?」
いつまで経っても転移しようとしないトウマにマサキは半ば呆れながら催促しようとしたが、トウマは俯いたままポツリとそれを遮った。一瞬の間をおいて、低く抑えられた、しかし葛藤と決意と不安が三つ巴になって滲み出る声を紡いでいく。
「だったら……もし、もしマサキにその選択権があれば……マサキはここから逃げるのか?」
「……言っている意味が分からないな。第一、こんなときに“たられば”か?」
「……違う。“たられば”じゃない」
その一言と共に、トウマは右手に握られた
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