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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
視えざる《風》を捉えろ!
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うに、どれだけ空中で心地良い浮遊感を謳歌しようとも、いつかは地面に叩きつけられるように、マサキの身体と地面との彼我距離は重力によって縮められていき、そしてゼロになる。

「カハッ……! ゲホッ! ゴホッ!!」

 地面を離れていた代償として、石畳が強かにマサキへぶつかった。それだけではとどまらず、硬い地面を何度もバウンドしながら転がっていき、かなりの勢いを維持したまま壁に打ち付けられたところでようやく停止する。衝撃で肺に溜まった空気が一気に逆流し、暴走した空気の奔流がマサキの息をかき乱す。

「マサキ!!」
「ああ、大丈……ゲホッ! ゴホッ!」

 ゆっくりと身体を起こしながら右手をひらひらと振り、言葉にならなかったその先を駆け寄ってくるトウマに伝達する。トウマはマサキのもとに駆け寄ると、身体を支えながらポーチから小瓶を取り出した。

「マサキ、ほら、飲め」
「……ああ、すまない」

 マサキは掠れた声で言うと、壁にもたれて足を投げ出した状態でトウマの手に握られた小瓶を受け取り、一気に(あお)った。お世辞にも美味とは言えないレモン風味のポーションを胃へと注ぎ込み、ようやく一息つくことに成功する。

「……マサキ」
「ああ、分かってる。……流石にこれ以上は無理だ。撤退しよう」

 ようやく息を整えたマサキは、尚も冷静に言った。
 今の攻撃、敵の予備動作はおろか敵の位置、攻撃方法など何から何までが不明だった。それほど不確定要素が強い状況で戦い続けるなど、文字通り自殺行為だ。ここは一度撤退し、今得た情報を元に攻略会議を行ってから再度攻略を試みるしかないだろう。

 マサキの言葉に、トウマは真剣な表情で力強く頷くと、腰元のポーチから転移結晶を取り出した。マサキも続いてポーチをまさぐる。
 ――しかし。

「…………?」

 ポーチ内のどこを探っても、転移結晶が手に触れることはなかった。苛立ったマサキがより深くポーチに手を突っ込むが、その手に触れるのはポーション類の小瓶のみ。しかも、やけに数が少ない。
 不審に思ったマサキがポーチを覗き込むと、そこに入っていたのは明らかに朝よりも少ない、たった数個のポーションだけだった。

「馬鹿な……!」
「どうした……って、え? マサキ、転移結晶は!?」

 ポーチを覗き込んだトウマの声に反応するよりも速く、マサキは記憶を巻き戻した。それによると、確かに朝の時点で転移結晶はポーチ内に存在していたし、ポーションの数も多かったはずだ。そして、それから今までの間にそれらを使ったことはおろか、ポーチから取り出したことさえ一度としてない。

(どこかに落とした? ……そんなバカな。第一、硬い石畳の上にビンを落とせば耐久値がゼロになって消滅するものが出てもおかしくない。
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