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「んんんん〜ん〜んっんん〜ん♪」
一人の少年が真夜中の街を陽気な気分で歩いていた。
歳は十七歳ほどだろうか。スラリと伸びた背丈に長い脚。肩まで掛かる藍色の髪をオールバックにし、前髪を止めている黄色のカチューシャ、そして何がおかしいの少しにやついた目付きをしたかなりの美形だ。
「天使に悪魔に堕天使に、さらにはドラゴンに妖怪ときた。この世界もなかなか面白いよな」
少年は歩くの止め、そんなことを呟く。昼間ならば周りの騒音にかき消されてしまうだろうが、今は真夜中。その言葉がやけに周りに響いた。
「あんたもそう思うだろう? 堕天使さんよぉ?」
堕天使――それはその名の通り堕ちた天使だ。欲に溺れた者や神に反逆した者が天界から追放され、地に堕ちた天使達を指す言葉だが、普通の世界ならそんな者は存在しない。しかし、この世界は普通とはかけ離れた異常な世界だ。
「私の気配に気付くとは……貴様は……何者だ?」
少年の呼びかけに応えるかのように、目の前に見知らぬ男が立ち塞がった。無機質な目でジッと少年を見つめてくる。
「何者? あんた面白いこと聞くなぁ。ただの人間だぜ」
「ほざけ。貴様のような人間がいてたまるか。貴様からは神器よりも異質な気配を感じる」
少年はさらに目付きをにやつかせ、当然のように自分は人間だと言う。だが、先程から人間では耐えられない量のプレッシャーをかけているのにもかかわらず、少年はただにやついているだけだ。
「……貴様には二つの選択肢がある。我々堕天使の配下に入るか、今ここで殺されるか。選べ」
この少年は危険だ。人間でありながら神器……いや、もしかすると神滅具以上に異質な力を宿している可能性がある。できることならこちら側に引き込みたいところだが、少年がそれを拒否すれば――
「――――くくく、くっははははははははははぁ!!」
少年から返ってきた答えたはイエスでもノーでもない笑い声だった。気がおかしくなったのか?
いや違う。これはそんな可愛いものじゃない。まるで荒唐無稽なことを話した奴を馬鹿にするように、選択肢を出した堕天使を見下すように、本当に心の奥底から可笑しいと感じているような、強者だけに許された笑い方だ。
「な、何がおかしい?」
何とか絞りだした声は情けなく震えていた。気が付けば手や足も小刻みに震えている。これではおかしいのは自分の方ではないか。
もはや堕天使にはこの少年と戦うという選択肢はなかった。それ程までに自分とこの少年との圧倒的な戦力差を感じたのだ。
「おかしい? おかしいに決まってるだろ。まぁ、その理由はあんたが一番理解してると思うけど、なぁ?」
少年がそう言った瞬間、とてつもない
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