暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
戦友の血を吸いながら………
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に戦ってはいけないものと対峙しているような気がしたから。目の前にいるモノが、本当に人間なのか。人間の皮を被った、全く別のモノだと思ったから。

そう思うと、身体が動かなくなった。

身体の身体機能がバチン、バチン、と強制的に外され、感覚が仮想体(アバター)から乖離していくのが分かる。

すうぅぅーっ、と視界が暗くなり、気が付くとテオドラの身体は地面に倒れていた。

しかし、倒れた時の衝撃は一切ない。ただ、視界が横になっただけのようだ。

音も僅かにしか聞こえなくなった。世界そのものから拒絶されたような気がする。

そんなテオドラを、レンは心底侮蔑するような目で見下した。

「《零化現象(ゼロフィル)》…………、か。つまらないね、本当につまらないよ、テオドラねーちゃん。この程度で僕に《呑み込まれた》んだ。昔のテオドラねーちゃんだったら、絶対に恐怖を抱く暇もなく敵に踊りかかって行ったものだったのに」

はぁ、と紅衣の少年はため息をついた。

テオドラは、粘ったい闇の底でそれをぼんやりと眺めていた。胸中で渦巻くのは、深い敗北感と、諦めの心。

零化現象(ゼロフィル)》は、プレイヤーの精神が深い諦めや喪失感、畏怖といった感情で埋め尽くされた時、負の心意が己の仮想体(アバター)を《動けない》ように事象の上書き(オーバーライド)してしまう現象のことだ。

テオドラ自身も、話には聞いたことがあったのだが自身で体験するのはこれが初めてだ。

───思ったより………ヤな感触だな。

テオドラは、深い闇の中で漂っていた。もうその四肢からは、闘志という名の力は抜けている。

そして、紅衣の少年はゆっくりと、いっそ優しいと言う言葉が出てきそうなくらいにゆっくりと右手を上げた。

戦闘中に出さなかった鋼の糸に、殺意のこもった漆黒の過剰光が纏わりついていく。

それが最後に見た光景。

「さようなら、テオドラねーちゃん。また会えたらいいね」

それが最後に聞いた言葉。

その言葉がレン自身に向けられた言葉とは、誰が思おうか。

テオドラは、その言葉を聞いたとき、ハッと目を覚ました。

なぜかは分からない。分からないのに、目が醒めた。

闇が切り裂かれ、鎖で縛られたようだった五感の感触が戻ってくる。音が耳朶を打ち、ワッと世界に光が戻る。

しかし、それを全部確認する前にテオドラは思わず口を開いた。何を言いたいとか、そんなことは微塵も考えなかった。ただ、声を掛けたかった。

「…………ッ!れ、レン────」

叫びかけたテオドラの言葉を遮るかのように、否定するかのように、拒絶するかのように、レンの口からは言葉が漏れた。己の、最大の心意技の名が。

─────魔女狩(ソルシエール)《断
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