暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十七話  決戦(その六)
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
何処か他の艦に移乗したはずだ。そこから全軍の指揮を執っている……」
彼方此方で呻き声が起きた。

「帝国軍、反撃してきます!」
オペレータの声が上がる。皆が私を見た、指示を求めている。
「攻撃を、もう一度敵中央に攻撃だ」
オペレータが私の指示を伝えている。しかし、良いのか? ローエングラム公が中央に居るという確証は何処にもない、しかし……。

『ヤン提督』
「はい」
『どうやらもう一戦しなければならんようだ』
司令長官の声は疲れていた。無理も無い、全てが振り出しに戻った。いや、ローエングラム公の位置が分からない以上状況はむしろ厳しくなった。それでも司令長官の立場では戦えと言わざるを得ない。

してやられた……。鋭気、覇気に富むローエングラム公だから前線に出てきたと思った。だがそうでは無かった、あれは囮だった。こちらの焦りを読んだ厭らしい程に効果的なトリックだ。同盟軍の攻撃をブリュンヒルトに集中させ、撃沈させる事で油断させた。その隙に帝国軍は陣を再編した。そしてローエングラム公が何処に居るのか誰も分からない……。

「全力を尽くします」
『頼む』
通信が切れた。撤退を進言すべきだったのだろうか、もう一度、ゲリラ戦の展開に戻るべきだと……。現状では勝算は極めて少ない、ローエングラム公を探す困難さも有るが一度得たと思った勝利を失った徒労感、これが大きい。味方は疲労困憊している、天国から地獄に突き落とされた……。

しかし、撤退できただろうか? 味方はいずれも帝国軍の奥深くに入り込んでいる。この時点での撤退は帝国軍が混乱しているのでもなければ難しいだろう。となれば残り少ない時間で帝国軍を突破するしかない。つまり攻撃をし続けるしかないという事だ。してやられた、また思った……。



帝国暦 490年  5月  8日   ガンダルヴァ星系   バルバロッサ   ナイトハルト・ミュラー



「閣下、反乱軍は相変わらず攻勢を取っていますが以前ほどの勢いは有りませんな」
「そうだな」
オルラウの言う通りだ。スクリーンに映る反乱軍第一艦隊の攻撃は五時間前に比べれば執拗さと粘りに欠けると言って良い。いや欠けているのは必死さか。おかげで指揮を執るのもかなり楽になっている。

「やはりブリュンヒルトの件が効いているのでしょうか?」
「そうだろうな」
勝ったと思ったはずだ。だが勝利では無かった。そしてローエングラム公の居場所も分からない。勝算は皆無に等しくなったのだ、反乱軍の士気はどん底だろう。

「それにしても総旗艦を囮に使うとは……」
オルラウが首を振っている。確かに意表を突かれた、だがいかにもエーリッヒらしい作戦だ。まあ後でローエングラム公に対する言い訳には苦労するだろうが……。
「戦争に勝つのと戦闘に勝
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ