第四十七話 決戦(その六)
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ム公も死んだはずだ。終わった……、ようやく長い戦いが終わった……。いや何も終わってはいない、戦争はこれからも続くのだ、何も終わっていない……。
「閣下! おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
ムライが、パトリチェフが、シェーンコップが、グリーンヒル大尉が口々に叫んでいる。艦橋にはベレー帽が舞い、あちこちで喜び抱き合う姿が有った。泣いている人間も居る。何が嬉しいのだろう、私は平和の到来を潰したのに……。スクリーンの帝国軍は総司令官を失って後退している。
「まだ終わっていない。もうすぐ補給基地を制圧した帝国軍が戻ってくるはずだ、その前に撤退しなければ……。ビュコック司令長官と話したい、通信の準備を」
「はい」
グリーンヒル大尉がオペレータに通信の準備を要請するとようやく騒ぎが収まった。
『ヤン提督、良くやってくれた』
「いえ、有難うございます、……今後の事ですが」
褒められても素直に喜べない所為だろう、どうも歯切れが悪い。
『うむ、時間も無い。敵はローエングラム公を失い混乱しているだろう。撤退よりも突破の方が良くはないかな』
そうですね、と言おうとした時だった。オペレータが“提督”と声をかけてきた。司令長官と話しているのだ、“後で”と言おうとしたが彼の顔面は強張り声は震えている。何が有った?
「帝国軍が妙な通信をしています」
「……」
ビュコック司令長官を見た、司令長官も訝しげな表情をしている。
「総旗艦ブリュンヒルトは失ったが総司令部は健在である。ラインハルト・フォン・ローエングラム在る限り帝国に敗北無し。全軍反撃せよ」
総司令部は健在? ローエングラム公は生きている? 艦橋が凍りついた。皆顔を見合わせている。
「その通信は何処から出ている」
「それが、発信場所は一カ所ではありません」
「なに!」
「通信は複数の艦から出ています」
ムライ参謀長の問いかけにオペレータが答えた。複数? 逃げる暇など無かったはずだ。だが複数から通信……。戦術コンピュータを見た、コンピュータは帝国軍が陣形を整えつつある姿を映しだしている。あの動きは後退では無かった、再編だったか……。
「やられた……」
思わず唇をかんだ。ローエングラム公にしてやられた。
「ローエングラム公は死んでなどいない、生きている」
「しかし逃げる暇など」
「居なかったんだ! あそこには……」
ムライが私の答えに愕然としている。彼だけでは無い、パトリチェフ、シェーンコップ、バグダッシュ、グリーンヒル、そしてオペレータ達。皆愕然としている。
「どの時点でかは分からないがローエングラム公はブリュンヒルトから降りたんだ……。あの時には無人だっただろう」
「……ではローエングラム公は何処に……」
「分からない、
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