第四十七話 決戦(その六)
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ものが有るのか、それとも人命こそがこの世でもっとも大切なものなのか……。分からない、私には答えが出せない。だがそれでも私は戦争を選択した。
反発、だろうか、反発かもしれない……。黒姫の頭領に対する反発。イゼルローン要塞を奪われた、明らかにこちらの隙を突かれた……。屈辱だった、あれほどの屈辱は味わったことが無かった。そして着々と宇宙統一に向けて動く彼に反発した。だからあの防衛計画を考えたのかもしれない。ただ彼に私と同じ屈辱を味あわせたい、それだけの思いで……。何という事だろう、思わず溜息が出た。
この戦いでも何度も邪魔された。フェザーンを利用した妨害工作は不発だった。補給部隊の撃破も邪魔された。もし、ローエングラム公の死を知れば彼はどうするだろう? ローエングラム公の後継者を擁してもう一度宇宙統一に向けて動くのだろうか? その時私はどうするのか、また戦うのか……。もしかすると私は平和の到来を妨げただけの男として歴史に刻まれるのかもしれない……。また溜息が出た。
ユリアン……、あの子は私に憧れている。多分この戦争で私が勝てばその想いはますます強まるだろう。そしてユリアンは軍人への道を歩むに違いない。私の詰まらない反発があの子にも人殺しをさせてしまうのだ。そしていつかあの子も後悔するだろう。何故軍人になったのかと……。
「アッテンボロー艦隊が更に帝国軍総旗艦に近付きます、射程距離に入りました!」
オペレータが叫んだ。だがそれに反応する声は聞こえない、しかし皆が緊張しているのが分かった。もう少し、もう少しだ。もう少しでローエングラム公に届く。しかし、良いのだろうか……。皆が興奮している中、私だけがその興奮を共に出来ずにいる。
ブリュンヒルトの左舷が爆発した、一カ所、二カ所!
「ブリュンヒルト、左舷被弾!」
艦橋に歓声が上がった。おそらく同盟軍のどの艦艇でも上がっているだろう。レーザーか、或いはミサイルが当たったか、ぐらりとブリュンヒルトが傾いている。多分、ローエングラム公は床に投げ出されたに違いない、負傷しているだろう。
ブリュンヒルトは懸命に態勢を立て直そうとしている。見かけによらず頑丈らしい、帝国軍総旗艦に相応しい防御力を持っていると言う事か。だがさらにブリュンヒルトの左舷に火柱が上がった。今度は外部からでは無い、内部からの爆発だ。エンジンか、或いは推進剤、弾薬に火が回ったか……、致命的と言って良いだろう。
のたうつブリュンヒルトにミサイルが、レーザーが集中した。一発、二発……、閃光と爆発、そして煙、さらに内部からの爆発。……もう助からない、断末魔のブリュンヒルトに更に攻撃が集中した。一発、二発、三発……、一際大きな爆発とともにブリュンヒルトが四散した……。おそらく逃げだせた人間は居なかっただろう……。ローエングラ
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