5話
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振り返るキンジ。慌てて教壇の方に振り返り、担任の高天原ゆとりに頭を下げる。
「す、すいません高天原先生。ちょっと色々ありまして……」
「いいですよー。見たところ、事情が事情みたいですしね?」
「ありがとうございます」
キンジは心底ホッとする。高天原ゆとりは担任としては比較的アタリな教師だ。性格は温厚で美人、誰にでも優しい。これが強襲科担当、蘭豹なんかだった日にはあの世行きだ。
とはいえ、謝らないままだったならいかに高天原教諭でも少しも腹が立たないなんてことはなかっただろう。キンジは瞬き信号で不知火に感謝の意を述べる。
不知火もそれに気付き、返してくる。
(何々……気にしなくていいよ。好きでやってることだから、か。こいつ本当良い奴だな)
そういえば、不知火にはいつも助けられてばかりだなぁ、としみじみと思い返す。誰とでも仲は良いし、よく気の合う親友だ。
ただ。
(懸念があるとすれば……白雪とだけはあまり仲が良くないんだよな)
それを知った時は、心底驚いたことを未だ鮮明に覚えている。この聖人君子のような男に嫌われる者がいるとすれば、それは随分性根が腐ったヤツなんだろうなあと思えば、なんとソイツが幼馴染だった時の驚きったらない。
が、納得出来ない部分は、無くもない。白雪はキンジに対する悪質なストーカー行為を重ねており、一部の関係者にはそれが露呈している。不知火もその一人で、仲違いはそれが原因とキンジは当たりを付けていた。
(白雪も、あれが無ければ悪いヤツじゃないんだがなぁ。不知火のヤツは真面目だから、リアルな犯罪行為を許容出来なかったのかもな)
まあ、この武偵高では四六時中銃弾が飛び交っているのだが。それには慣れたんだろうな、と勝手に結論付ける。
と。そんなことを考えていると。
「すみません、遅れてしまって……ってあれ?」
謝りながら扉を開けたのは、俺と同じく武偵殺し事件に巻き込まれたアリアだった。
「これは由々しき事態であります」
ゆるふわの金髪を上下させて言った峰理子の言葉に、HR中ということも忘れ円形に並んだクラスメートのほぼ全員が同意した。新学期早々、というかクラスが決まって早々のこの団結力である。野次馬精神、恐るべし。
「キーくんの服がボロボロ。で、後から来たアリアの服もボロボロ。これが指し示すものっていったらやっぱり……」
「その辺にしとけよ、理子」
パシッ、と軽快な音が響く。教科書で頭を叩かれた理子はあいたっ! と可愛らしい声を上げて頭を摩った。
「もー、話してる途中に叩かないでよねー、キーくん。ぷんぷんがおーだぞ?」
「お前こそ、下手なことを口にしない方がいい。じゃないと後でーー」
ボソボソ、とキンジが理子の耳元で囁くと、理子の頬にほんのりと赤味がさした。
クラス全員の心の声が、重なる。
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