第百三十八話 嘘も方便
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あの阿呆共が騒ぎ立てているだけかも知れんからな」
「では明日は謁見なさると言う事で宜しいで御座いますか」
「うむ、その様に取りはからってくれ」
「はっ」
さて、明日は午前中は謁見で一息付けようが、午後からは又、阿呆共の相手をする羽目になるな、全く憂鬱になるばかりだ。全く脳天気な連中は手に余る。ヨアヒムの様に島流しにでも成って居た方が遙かに我が家には貢献しているような物だ。しかしあれも今年の6月にはオーディンへ帰って来られるらしい、恩赦で卒業だそうだからな、しかし妻の逆鱗に触れた以上は戻ってきても辛かろう。しかし儂にも立場があるから、助けることも出来ん。自力で道を開いてくれることを祈るだけだ。
さあ明日も早いから、そろそろ寝るとしよう、最近阿呆共のせいでまともに眠れなかったのだから、今日ぐらいは寝ても良いだろう。
「アンスバッハ、もう今日は寝る事にする。来訪者にはその旨伝えてくれ」
「はっ、承知致しました」
ふう、良い夢が見られるわけもないが、眠るとしよう。
帝国暦484年5月8日
■オーディン ノイエ・サンスーシ オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク
「何と、陛下はご気分が優れぬと」
「左様です。公爵様」
朝一番で謁見に赴いたが、陛下はご気分が優れぬと言う事で今日一日謁見を行わないとは、此では又阿呆共に詰め寄られるではないか。
「して、明日以降は如何であるのか?」
「私ごときに、判断できかねぬ事に御座います」
侍従の言葉に頷くしかない。
「仕方ない。陛下にはご自愛くだされとお伝えください」
「はっ、公爵様のお言葉、お伝え致します」
やれやれ、仕方が無い暫く宮殿で時間を潰して帰るしかないか。
「公爵」
ん。呼びかけられた先には、国務尚書リヒテンラーデ侯が居た。
「何用ですかな、国務尚書」
「公爵は、最近貴族の間に流れている噂をご存じかな?」
ほう、流石だ、この老人はその為に話しかけて来たか。此処は聞いておくのが肝要だな。
「噂というと、農奴のことですかな?」
「まあ、その様なものですな。此処で立ち話も何ですので此方へ」
そう言ってリヒテンラーデ侯は儂を小部屋へ誘ってきた。僅か10m四方ほどの部屋だが、趣味の良い部屋だ。
「して、国務尚書、どの様な話ですかな」
「公爵は、最近貴族の間に、恐れ多くも皇帝陛下が、門閥貴族を無視し農奴解放を目指しているという、誠に不敬な噂を流している輩がいる事をご存じかな」
やはりこの話か、国務尚書にしてみれば、この儂の所へ不平不満をぶちまけに来る連中に乗せられるなと言いたいのであろうが、無論そんな連中に乗せられほど儂も馬鹿では無いが、連中を黙らせる為にも、陛下の真意は知りたいところだ。
「存じておる。
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