審判者
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ではそれを感じる心の余裕などない。
その瞬間、中は自分の心臓は確かに一瞬その鼓動を止めたのを感じた。
ただし、その原因を作った当人は中の状況など全く考慮してくれなかった。
「おはようお兄ちゃん〜♪」
「お、おはよう…」
息なし視界の外から現われたのは…女の子だった。
あるいは幼女と言うべきかもしれない見た目の少女は、何が楽しいのかにこにこ笑い、ツインテールにした赤い髪が彼女の気持ちを代弁するかのように激しく揺れていた。
子供特有の丸い輪郭と大きめの緑の瞳は中から見ても愛らしい、おそらくこの場に十人いれば全員が同じ感想を抱くだろう。
誰のチョイスか知れないが、黒のゴスロリな子供服を着ているのも良く似合っていると思う。
その笑顔の威力は、如何に不意打ちを食らいまくって思考能力が低下しているとはいえ、中が素直に挨拶を返してしまう程だ。
「待っててお兄ちゃん、今先生を呼んでくるね〜♪」
「あ、ちょ!!」
中に何もさせる気がないのか、それともただ単純に何も考えていないだけなのか…名も知らない少女は誰何の暇すら与えてくれない。
さっさと部屋に一つだけあった扉を開けて、おそらく彼女の言う所の先生を呼びに出て行ってしまった。
引きとめる間もない早業に、思わず伸ばそうとして右手で宙を掻き、口を半開きにした中だけが取り残される。
「な、何なんだ一体?」
ここが何処なのか、何で生きているのかなど、何一つ意味が分からない。
それでも多少は冷静さの戻って来た頭は周囲を観察する余裕を取り戻した。
「…山小屋?」
あるいはロッジと言うべきか?
木で作られた部屋には少女が出て行ったドアと窓が一つづつと、自分が今寝ているベッドだけのシンプルでそれ以外の者が何もない部屋だ。
今更ながらに自分の体を確かめれば、下着姿ではある物の記憶に在る自分の服、怪我はしていない。
これに関しては死んでいない限り使徒の再生能力が自分を癒すだろうから、怪我をしていたとしても寝ている間に再生したのだろう。
つまり能力的にも何の問題もない。
少なくとも分かる範囲では自分は万全の状態だ。
「後はやっぱりここが何所かって事と、あの秋晴って奴がどうなったかだな…」
思いだせば苦々しい思いが込み上がってくる。
文字通り手も足も出ず、自分の計画は完全に潰された。
原作知識を持つ以上、いくらでもリカバリー可能だろうが、おそらくその度にあの男は立ちはだかるだろう。
「…生かしてはおけねえよなぁ…あん?」
ふつふつとわき上がってくる恨みの感情に修正への復讐を考えていると、扉の向こうが騒がしくなってきた。
しかも明らかに一人ではない。
複数人分の足音が近づいてくる。
「お待たせ
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