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東方守勢録
第九話
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当然か」

「……俊司さん……は?」


辺りを見渡すが、俊司の姿は見当たらない。見えるのは、名も知らない男のみ。状況から考えて俊司の復讐相手だろう。

妖夢の心臓の鼓動は、一気にピークを迎えていた。


「……どこにいるんですか?」

「なに? 聞こえないんだけど?」

「俊司さんは……どこにいるんですか?」

「ああ、俊司君ね? 知らないなぁ」

「答えてください……」

「だから知らな」

「答えろおおおお!!!!!」


妖夢はいきなり叫ぶと、一気に男に近づき刃先を首に突き付けていた。いつもの穏やかな目は消え、憎悪に満ちた目で男を睨みつける。

だが、それでも男は不敵な笑みを浮かべていた。


「まあまあ落ち着けって。その目……あいつと全く同じだぞ?」

「うるさい……早く教えろ……さもないと切る!!」

「別にかまわないさ切っても……どうせ死ぬんだから」

「!?」


男は軽く鼻で笑うと、腹部を抑えていた手をどかす。そこには生々しくつきぬかれた傷穴と、赤々しい血がべっとりといつていた。

なんとも言い難い苦痛が、少女の心を貫く。


「答えがほしいか?」

「……嘘……だ……」

「じゃあちゃんと言ってやるよ。俺とあいつは相討ちだったんだよ。二人揃って死んじゃいますってことさ」

「!!」


男がそう言った瞬間、妖夢の手から楼観剣が滑り落ちた。同時に少女の体から力が抜け、その場に座り込む。

男はそれを見ながら、笑みを浮かべていた。


「なに、そんなにショックだったのか? あいつのことが好きだったの?」

「あ……ああ……」

「あいつも哀れだよなあ。こんなこを置いていくなんてさぁ」

「やめろ………やめろやめろやめろ!」

「まあ、どうでもいいか。あいつが死んだのにはかわりないし」

「やめろおおおおお!!!」


妖夢は再び楼観剣を手に取ると、何も考えようとせず男に切りかかろうとする。

だが、刀をふりおろそうとした瞬間、紫がその手を引き留めていた。


「やめなさい妖夢」

「はなしてください紫様!こいつは……こいつは!!」

「気持ちは分かるわ。でも……あなたが彼を殺してなんになるの?」

「関係ありません!!」

「そうよ。何もないのよ。死にかけの彼を切ったところでなにもならない……俊司君が戻ってくることはない」

「でも……でも……」

「こらえなさい妖夢。悲しむのは……すべて終わらせてからよ」

「……う……あ……」


すっかり脱力してしまった妖夢を紫は片手で支える。そして、そのまま男を睨みつけた。


「何?」

「……外道が」

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