第九話
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ど分かりたくても分からない。だが、自然に流れてくる涙は、どこか悲しみの感情をほんのりと漂わせていた。
(そうか……妖夢……)
ふと頭の中に出てきたのは、半人半霊の少女の笑顔だった。
いつでも俊司を支えてくれ、ともに切磋琢磨をしてきた仲。それに、異性として好意を向けあってきた仲。だが、彼女からの答えは聞いていたが、自分の答えをきちんと伝えていなかった。
それが悔しくて泣いているのか、それとも彼女に会えないのが悲しくて泣いているのかは分からなかったが、彼女が絡んでいることは確かだった。
「そうか……そう……か」
かすれてほとんど聞こえなくなった声を、絞るようにして出し始める俊司。彼の顔は涙を流しながらも、決して悲しもうとはしなかった。
「ごめんな……妖……夢……約束……守れ……そうに……な……い……ゃ……」
それが、少年の最後の言葉になった。
4階 階段付近
「静かになりましたね……」
「そうね……」
最上階の爆音や地響きがなくなり、妖夢と紫の心配は最高潮に達していた。
結果がどうなったのか気になるが、妖夢にとっては俊司が生きているかの方が心配だった。ほんの数分前からいやな予感がしていた。
「……」
「妖夢……」
紫も俊司のことを気にしているのか、心配そうにする妖夢の肩をポンとたたく。少しは気を紛らわすことができたが、それでも平常心でいられるわけではなかった。
その時だった。
「!?」
突然ガラスが割れたような音がしたと思うと、光の破片が階段から現れる。
「まさか魔法が……」
「……」
紫は何も言うことなく階段に足をかける。
だが、魔法が発動することはなく紫の足は階段に触れた。
「発動しない……」
「行きましょう!!」
二人は大急ぎで階段を駆け上がって行った。
最上階
「俊司さん!!」
広場に入るなり妖夢はそう叫んだ。
だが、返事は帰ってこず、妖夢の声は広場を響き渡って行った。
「俊司さん……?」
「おかしいわね……静かすぎる」
「やあやあ……いらっしゃい」
「!」
突如、男の声が広場を響き渡る。
辺りを見渡すと、広場の奥の壁にもたれるようにして男が座っていた。
「案外遅かったんだね? まあ
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