第四十六話 決戦(その五)
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ェンリーは私を見つける事が出来るかな……」
頭領がクスクス笑い出した。怖いよ、僕ようやく分かった。頭領は怒っている。しつこく攻めてくる同盟軍、いやヤン・ウェンリーに怒っているんだ。皆も僕と同じ事を考えたと思う、総旗艦ブリュンヒルトの艦橋には頭領の笑い声だけが流れた。
宇宙暦 799年 5月 4日 ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
「それで状況はどうなのかね、本部長」
「同盟軍は攻勢をかけています。ヤン・ウェンリー提督率いる第十三艦隊はこれまでになくローエングラム公に肉薄しているようです」
「そうか」
クブルスリーの表情は決して暗くない、口調にも力が有る、状況は優勢なのだろう。しかし問題は勝てるかだ。
「勝てるかね」
「同盟軍の指揮官でローエングラム公と戦って勝てる人間が居るとすればヤン提督だけです。油断は出来ませんが今現在ヤン提督は優勢に戦いを進めています。問題は時間でしょう」
「そうか、問題は時間か」
確かにヤン・ウェンリーは名将だろう。圧倒的な戦力差をはね返し帝国とほぼ互角の条件での決戦にまで持ち込んだのだ。時間か……、帝国軍は早ければ八日か九日には戻って来るはずだ。残り四日から五日……、何とも厳しい。溜息を堪えた。
「議長閣下」
「何かな、クブルスリー本部長」
「気になる情報が有ります」
クブルスリーの表情が厳しい。気になる情報とは良くない情報の事だろう、一体何なのか……。
「リオヴェルデの補給基地を攻略した帝国軍がバーラト星系に向かっているという報告が有ります」
「……間違いないのかね、それは」
クブルスリーが頷く、思わず溜息が洩れた。何時かは来ると思っていた、とうとう来たか……。
「あとどのくらいでハイネセンに来るかな?」
「四日から五日と見ています」
「……四日から五日、帝国軍がウルヴァシーに戻るのと同じ頃だな」
「はい」
また溜息が出た。クブルスリーが厳しい表情で私を見ている。気を引き締め直した。
「ヤン提督が勝てばどうなるかな、帝国軍は引き上げるか?」
クブルスリーが首を横に振った。
「分からないとしか答えられません、引き上げるかもしれませんがそのままハイネセンを攻略する可能性も有ります」
そうだな、その通りだ。甘い観測を持つべきではない。
「その時は我々に対する処分は過酷なものになるだろうな。同盟は滅び私も君も死ぬ事になるだろう」
「はい」
「だがヤン提督が勝てば、ローエングラム公が死ねば、自由惑星同盟は、民主共和政は復活する事が可能だ」
クブルスリーが頷いた。
「私はその可能性に賭ける。その可能性が有る限り、私に絶望は無い」
「私も同じ想いです」
私が頷くとクブルスリーも頷いた。死は覚悟している
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