預かった子供
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「ただいま。」
「唯!!
今までどこに行っていた!!」
帰ってきて早々、夫である関栄に怒鳴られる。
最近はこの村でも賊がやってくる事が多い。
今朝は関栄にどこに行くかを告げないで外に出かけたのだ。
今の今まで心配していたので思わず怒鳴ってしまう。
「どこにって森に行ってたのよ。」
「それを私に言ったか?」
「あっ。」
言い忘れた事に気がついて関流は声をあげる。
「お前は強い。
だけど、それでも万が一のことはある。
頼むから私に一声だけかけて言ってくれ。」
心の底から心配していたのか、関流の肩に手を置いて言う。
心配させていた事に気がついて、関流は謝る。
「ごめん。
次からはちゃんと言うわ。」
「分かってくれたのならいいよ。」
関栄に許しを貰って少しだけホッ、とする関流。
ちなみに関栄が言っていた唯というのは関流の真名だ。
真名とは本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前であり、本人の許可無く真名で呼びかけることは、問答無用で斬られても文句は言えないほどの失礼に当たる。
唯の腕の中の赤ん坊が大きな声で泣き出すと、関栄は唯の腕の中にいる赤ん坊に気がついた。
「唯、その子供は?」
「この子?
この子はね・・・・」
先程の森での出来事を関栄に説明する。
それを聞いた関栄はそうか、と呟いた。
「そんな事があったのか。」
「この子を育ててほしい、って遺言を聞いてね。
でも、この子一向に泣き止まないのよ。」
「どれ、貸してごらん。」
関栄に赤ん坊を渡す。
関栄は慣れた手つきで赤ん坊をあやす。
それが効いたのか、泣き叫ぶ声は次第に小さくなっていき、眠ってしまう。
「ほんと、こういう事は栄進、得意よね。」
「お前が不器用すぎるんだよ。」
栄進とは関栄の真名である。
栄進は唯と違い、武人ではなく文官だ。
赤ん坊は栄進に任せれる事を確認した唯は籠を置いて、薙刀を片手に家を出ようとする。
「おい、どこに行くんだ?」
赤ん坊を起こさないようにあやしながら、家を出て行こうとする唯に話しかける。
「この子の親を弔ってあげないと。
遺体はまだ、森の中にあるの。」
少し悲しげな表情を浮かべて唯は言う。
栄進は唯が悔やんでいる事に気がつき、こう言った。
「分かった。
だが、他の人に協力してもらいなさい。
一人じゃあ危ないからな。
それと、お前が気にする事じゃない。
結果的に見て、唯が居なかったらこの子は死んでいた。」
「うん、ありがとう。」
それだけを言って唯は家を出て行く。
何人かの村人の助けを借りて、赤ん坊の親の墓
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ