預かった子供
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赤ん坊を預かった女性は、ここに夫婦の遺体を置いていくのが非常に躊躇われたが、まずは預かった赤ん坊を何とかしないといけない。
夫婦に一礼をして、籠を背負い、薙刀を右手で持ち、左手で赤ん坊を抱きかかえる。
母親が死んでから、赤ん坊は一向に泣き止む気配がない。
「あ、ああ。
よ、よしよし。」
慣れない手つきであやしてみるが、効果は全くない。
完全に手詰まりなこの状況に女性は小さくため息を吐いた。
(おそらく、親が死んだことを感じ取ったのだろうな。)
そう思いながら、効果がないと分かっていてもあやすくらいしか思いつかなかった女性は、あやしながら自分の村に戻る。
少し歩くと、小さな村に着いた。
家の数も一〇には満たないほどの小さな村だ。
だが、交友関係は非常に深く、その女性が帰ってくると村人が挨拶をする。
「おお、関流さん。
無事だったかい?」
鍬を持って畑を耕していた男性の一人が女性、関流の姿を見て手を止めて話しかける。
「ええ、私は何とか。」
「おや、その手にいるのは。」
「はい、近くの森で夫婦が賊に襲われていました。
その時に生き残った赤子です。
私に育ててほしいと遺言を残して逝きました。」
「そうかい。
最近は賊が多くて困ったもんだよ。」
「近くの街に出向いても同じような事を耳にします。
おそらく、今の政治ではこの乱世を鎮める事ができないでしょう。」
二人は少し暗い雰囲気になる。
それに気がついた男性は話を変える。
「その預かった子供さんが大きくなるころには、この国も安定して欲しいよ。」
「私もそう思っています。
この子には幸せになって欲しい。」
それでは、と言って自分の家に戻る。
関流は根っからの武人で、幼い頃から武道を学んでいた。
一国の将になり、かなり有名な武人だったのだが、今の王とその側近に嫌気が差した。
偶然にも、同じような考えを持っていた男性がいて、一緒に国を出て、この村に辿り着いた。
今は山に出かけてはきのみなどを採りに出かけている。
そのついでに賊が旅人や他の村人を襲っていないか見回りに出ている。
(そのおかげでこの子だけでも助ける事ができたのだが。
早く平和になって欲しいものだ。)
自分達は逃げたのだ。
この国を救う事ができなくて、自分達もあの王や側近のように自分の事だけを考えるようになりたくなかった。
だから、国を出たのだ。
自分が暗い雰囲気になっている事に気がつき、それを感じ取った赤ん坊は泣きだす。
「暗くなるのは駄目だな。
この子が泣き出してしまう。
小さく呟いて考えるのをやめる。
自分の腕の中で依然と泣いている赤ん坊をあやしつつ、自分の家に戻った。
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